両親を憎んだ事は無い。母親が叩く理由も父親がそれを止めない理由も解って居たし、それは両親にも鴒多自身にもどうする事も出来無い事だった。解決方法なんて無い、そうされても仕方無いのだと。その部分以外を好きになって貰えたら良いと思って居た。だから、両親が望む良い子で居ようとした。
「君は両親に虐待されて居たんだ。生死に関わる酷いものを」
鴒多の目が醒めた時、傍に座って居たNo.0が言ったのはそんな衝撃的な言葉だった。起き抜けの鴒多は、そんな酷い事があったのかと未だぼんやりする頭で聞いて居る。返事をして声の方に顔を向けようとした時、体が思う様に動かない事に気付いた。
「両脚は撃たれて居た。左腕の骨折は何時やられた?母親か?」
体はどうやら固定されて居るらしい。どう言う事なのかと声の方を見る。サングラスの所為で表情は見えないが、穏やかなそれでは無い事は読み取れた。黒いレンズの向こうと目が合った様な気がして、急に怖くなる。目の前の彼の事、その先の話、自分自身の事。そうして漸く気が付いた。
「僕の……事……?何で……」
「何で、とは」
互いが互いの言う事を理解出来無い様で、先に口を開いたのは鴒多だった。動けば痛みがある筈だが、彼はベッドから起き上がろうとする。まるで痛みを感じて居ないかの様な振る舞いである。しかし固定されて居る所為でマトモに動くのは右腕だけ。なかなか上手くは行かない。