一連の話を聞いた壱架は言葉が出なかった。やはり信じられないと思いつつも、鴒多を責める気にはなれなかった。
「君の体は痛みに鈍感な様だが……その腕と脚は、君が思って居るより遥かに酷い状態なんだ」
今は未だ其処に着いては居るが、使い物にならないだろうとの事。いずれは切断して替わりのものを着けなければならない。既に手配は済んで居るとNo.0は続けた。鴒多は固定された体を見て腑に落ちないと言った表情をして居る。痛みに鈍感どころか全く感じて居ないであろう少年に、壱架は恐怖すら憶えた。
「失礼致します」
声がした後に扉が開き、スーツの男がまた独り入って来た。鴒多や壱架には目もくれず、No.0の元へ向かって行く。
「あ……」
鴒多はその様子を眼で追って居たが、その姿に見憶えがある気がして思わず声を上げる。あの家から鴒多を連れ出した醒奈であった。憶えのある者を見た所為か、鴒多の表情が少しだけ緩む。それに気付いた醒奈は鴒多の表情を読み取れず、少し気不味そうな顔をした。
「彼を憶えて居るのか?」
少し嬉しそうに返事をする鴒多だが、醒奈はその意味が解らない様で、変わらず渋い表情のままだ。
「……っと、奇種についての報告なのですが」
鴒多の反応を見たNo.0は後日、醒奈にある通達をする事に決めた。それが醒奈に取っての災難になると……知ってか知らずか。