その現場とやらは、ドーと逢った場所から然程離れて居ない様だった。彼は案内するのを拒否した。と言うか面倒臭がったが、何だかんだで着いて来てくれた。彼に声を掛けて正解である。 胴体部分が抜けたかの様に無くなって居る死体と、周辺には血やら肉片が散乱し文字通りの凄惨な現場だったと言う。切断面は刃物の跡では無くもっと乱暴な、咬み千切られたかの様に見えたらしい。死体の近くに嘔吐した跡があったが、調べたりせずに処理されたとの事。加害者のものかも知れないと思ったが、そんな事を彼に聞いても仕方が無い。処理した掃除屋を見付ける事は出来るだろうか。因みに、現場と言っても血痕のひとつも見当たらない。もし人間がやったのなら……手段は幾らでもあるだろうが、其処まで派手に散らかすだろうか。やはり奇種だろうと考えたくなる。情報を整理しようと暫く考え込んで居ると、ドーの視線に気付いた。
「……何か」
「少し擬態ってものを憶えた方が良いんじゃ無いか」
外界の上層部の人間に見えなくも無いスーツ姿はこの路地裏世界では目立つ。南槻としては寧ろ高圧的に見えて良いかと思って居たのだが。
「そんな事より、何かお礼をさせて頂きたいのですが」
「はぁ?別に困って無いが」
外界の者の、彼等に対する扱いが良く解る答えである。南槻としては彼を皮切りに此方側に人脈を作りたいので、今はその取っ掛かりを作って置きたい。