「んん……なぁに?」
窮屈そうに左眼を細め、巻かれたバンダナを取ろうと汚れた手を伸ばす。折角掛けてやったと言うのに、ジャケットも地面に落ちた。
「馬鹿、気味悪ィから巻いとけ。それと、取り敢えず何か着ろ。餓鬼の裸は見るに耐えん」
丁度新しいのを下ろそうと思ってたし……と思いつつ、既に汚れたジャケットを掛け直す。
「生憎、喰い物は何も無いが……まぁ動き回らなきゃ何とかなるだろ。お前みたいな気味悪い奴、襲う物好きも居ないだろうし」
喋って居る途中、動物の姿や足跡を見た事も無いのにふと気付く。気にし出すとまたキリが無いので、直ぐに振り払った。貶されて居る事が理解出来無いのか、そもそも聞いて居ないのか。少女の形をしたそれはまた笑顔を見せて、言った。
「あなた、いいひと」
右眼の空洞が見えない事で多少マシになったが、やはり気味が悪いものは気味が悪い。それに、何故だか素直に喜べない。逃げ出したい衝動が再び沸き上がって来たのと、もう出来る事は無いと判断したハンターは、鎖を引っ張ってその意思を連れに伝えた。明日の仕事へ行く途中、もし見付けたら何かくれてやれば良いだろう。動き回らなければとは言ったが、この何も無い場所でただじっとして居るなんて在り得ない。 恐らく無力であろうそれを独りきりで置き去りにする自分を、思い付く限り正当化しながら足早にその場を後にした。
「(あぁ……夢に出て来ません様に……悪夢を見ません様に……)」