この森、実は化物だらけだったりしないだろうか。もし何かが襲って来たとして、手持ちの武器で対処出来るだろうか。若しくは逃げられるだろうか……とか何とか考えながら、ハンターと犬は無機質にな程の静寂に警戒する。生物の気配すら無い様な気がするが、それならあの感覚は何だったのか。二人同時に勘違いするなんて事があるだろうか。
「………」
犬が何か見付けたのか、背後でガチャリと金属音がした。ハンターが其方を見ると、少し離れた場所で何かが動いたのが見えた。ショットガンに弾は込めてある。構えようと手を掛けた時だった。
「あ……ハンターさん、いぬさん、おかえりなさい」
「お前かよ!」
姿を現したのは化物……に違いは無いのだが、少女の形をした見馴れた化物。いや、見馴れてしまったと言うべきか。今朝出逢った時と違う所と言えば、何も身に付けて居ない事だろう。ジャケットとバンダナは何処へやったのか。人の善意を何だと思って居るのか。……それを理解して居るかどうかは怪しい。
「お前っ……まぁ良いや……」
ブラックホールの様な眼窩を見て更に嫌な気分になり、他は後でも構わないが取り敢えず此奴を隠すものが早急に必要だと思った。主にハンター自身の為に。犬が買ったものの中に眼帯があった筈。彼に持たせたままの紙袋に手を突っ込み、それを引っ張り出した。
「無くすなよ!絶対!」
何の抵抗も示さない少女らしきものを捕まえ、悪夢の元凶に思えて来る不気味な穴を塞いだ。これで多少はマシになっただろう。少なくとも人間には見える。