「嫌だね、後はお前がやれ。言い出したのはお前だろうが」
着せ替えまでやらされそうになったが、それは断固拒否した。手を掛けた事で懐かれても困る。せめて認識される程度に留めて置きたい。あろう事か自分で教えてしまった名前は既に憶えられて居る様だが。そう言う訳で犬の拘束具を部分的に外し、どうやって使うのか解らないものがあるとか言い訳をして、後の事は全て押し付けた。
「多少マトモになりそうか」
偶然なのか意図的なのかは知らないがサイズはほぼ合って居る様で、きちんと着れば普通の少女に見える……筈。事情を知らなければ尚良いと思う。アレを隠す為の眼帯も、お洒落アイテムに見える……かも知れない。紅いケープを肩に掛け、着せてやる作業は終了した。
「終ったか。帰る」
少女の姿をした化物はシャツに付いたフリルを弄ったりして暫く遊んで居たが、犬に手早く拘束具を着けるハンターを見て何か言おうとした。
「あー……」
「何だ」
何か言葉を考えて居るらしいが、出て来ない様だ。そう言えば、此奴はどの程度の知能があるのだろう。行動を見て居ると知らない事も多そうだが。
「んー……」
「……明日になっちまいそうだな」
犬の方は気にして居る様だが、ハンターに待つ気は無い。半ば強引に鎖を引っ張り歩き出す。今更だが、少しでも早く離れたい。二度と見たくないのも変わらないがそれはもう無理な気がするので諦めるとしても、出来る限り関わる時間を短くしたい。あの猫何時もあの場所に居るよな、位の認識で、それなら気紛れに構ったりする者だって居るだろう。 これ以上の深入りはもう御免だ。