【ドールの話2】
久し振りの気持ちの良い天気だが、特に何をする訳でも無くぼんやりと窓の外を眺めて居た。出掛けたいと思うと大抵雨が降り、何もしたく無いと思うと大抵晴れる。……様な気がする。触れられる機会を与えられたけれど、外の世界は自分を拒絶して居るのだなと思う。やはり閉じ込められて居る方がお似合いなのだろうか。
「何時もそうして居るのですね」
ドールは外を眺めたまま返事もしない。何時もの事なのでリルも苛立つ事は無い。望んで居たであろうものが手の届く所に来たと言うのに、この少年は一向に掴もうとしない。それに気付かないだけなのか、既に諦めてしまった後なのか、そもそも要らなかったのか。一つ屋根の下で暮らす様になって暫く経つが、ドールと言う人間を理解するには未だ時間が足りないのだなと日々感じる。僅かでも拒絶されて居る内は幾ら時を共にしようと進展は無いのだけど。
「おやつ」
「先日のチョコレートの店、本日はそれ程の混雑では無いかと」
「良いね」
「それとも何か作りますか」
「良いね」
ドールが動くまでリルが動く事は無い。特にこう言う時は何もしたく無い場合がある為、下手に何かしようとすると機嫌を損ねる可能性もある。故に、会話には余り意味が無い。