淡々と流れるリルの情報を聞いて居るのか居ないのか、ドールの返事は常に上の空で適当極まり無い。因みに、本人にも自覚はある様だがリルはお世辞にも料理が上手いとは言えない。それに「良いね」と返すのだから、返事と言うより声に反応して居るだけなのかも知れない。
「お前何しに来たの?本当は」
「本当も何も、最初に説明したでしょう」
唐突にドールの肩を掴むと力任せに傍のベッドに引き倒し、次に両手首を掴んで頭上に上げさせた。反撃するどころか受け身すら取れない子供を抑え付けるのは容易である。瞬きすら忘れた彼に跨がり、空いている腕で細い首を圧迫する。リルの表情の無い顔がぐっと近付く。
「何……」
ドールの眼に漸く光が戻り、しかし抵抗はせず、軽く咳き込んで眼を閉じた。リルは更に眼帯をくわえてずらし、右眼を露出させる。薄っすらと瞼が開き、ほんの少し宝石とやらが覗く。リルは初めてそれを直接見た事になるのだが、他の誰もがそうである様にその不可解な何かに興味が沸いた。本当だったのかと先ず思い、次に良く見てみたい、手にしたい、と。しかし直ぐに瞼は閉じてしまい、全てを諦めた少年が其処に居るだけ。
思考を現実に引き戻す瞼に軽くキスをして、拘束を解いた。