当然の如く激しく機嫌を損ねた為、リルはその日の残り時間を散々振り回される事になった。喰べたいもの、観たいもの、やりたい事、欲しいもの、それと思い付きの何か。通り掛かりに見たものを飼いたいと言われたのだけは、流石に諦めさせた。本当に必要な要求とただ困らせたいだけの要求を混同するのは不味い。そしてその判断はリルにかかって居るのだから。こうして何時も振り回されて居ると言えばそうなのだが。
「本日は大変に機嫌が悪かったもので、なかなかハードな一日でした。確かに御二人には扱えそうにありませんね」
普段は余り表情を崩さないリルだが、自業自得とは言え流石に疲れた様子が見て取れる。ドールもそれなりに疲れた様で、何時もより早く就寝したらしい。暫しの静かな時間である。
「彼の右眼、拝見させて頂きましたが」
正直な所両親に取っては宝石等どうでも良かった。独りで庭を歩かせる事すら戸惑う程大切な子供に訳の解らない価値があると聞かされたのは、産まれて間も無くの事。自分達には手に負えないだろうが、我が子を安易に手放す訳には行かない。リルを呼んだのは、少しでも好きな事をさせてあげたかったから。残念ながらドール本人には伝わって居ない様だが。
「実に興味深い。欲しがる者が多いのも頷けます」
「それは……」
その所為でドールが不幸になるのだけは避けたかった。