貰ったのも放置したのもお前だ、と言う訳で、擦り合いの結果やはり猟が中身を確認する事になった。自分の所為で死にかけて居る何かが其処に居るとしか思えなくなった猟は、胃の中のものを今にもぶち撒けてしまいそうな程気分が悪かった。最悪だ。こんな事になるなら帰宅して直ぐ開ければ良かったのに、何故急いで帰宅した理由を忘れたのか。何故空腹を優先したのか……。そんな事を考えながら手を伸ばす。生きてる。どう言う訳か元気に生きてる。動いた様に見えたから死んで無い。……と自分に言い聞かせ、何かを包んで居る灰色の布をゆっくりと捲った。
「は?人形……ヒト?」
取り敢えず死んだ何かでは無かった事に胸を撫で下ろし、小さく畳まれる様に入って居たそれを見てぼんやり思った。人間ってキャリーバッグに入るのだな、と。琴珈も覗いて驚いた。見た感じはシャチもその周りも寧ろ好みそうなのに、何故手放したのだろう。
「生きてるよね?」
「……息してる」
知らなかったとは言え猟はかなり雑な扱いをしたが、ずっと目を醒まさなかったのだろうか。再び自分がトドメを刺したのではと言う気になり、軽く目眩を覚えた。これが目を醒まして襲って来たとしても文句は言えない。今のこの状態なら抵抗もマトモに出来無いかも知れない。その場に座り込んでしまった猟を横目に、琴珈がそれに手を伸ばした。
「起きて、起きて」
頬や腕を軽く叩くが、目を醒ます気配は無い。薬で眠らされて居るのだろうか。そして琴珈の目付きが怪しい。
「……持ってく?」
「あんたに預けたら殺すでしょ」
「確かに」
「取り敢えず何か着せてあげないとね」
最早猟の事は目に入らない様で、琴珈はそれを抱き上げて部屋を出て行った。空になったキャリーバッグとテーブルの上のミートパイを見て、猟は深く溜め息を吐いた。負けて後悔する程あった食欲はすっかり無くなって居た。