【未完少女】
真っ黒な空と、疎らな街灯。 明るいとは言い難い街中を歩いて行く。目的は特に無い。適当に歩き回って、空を見上げて、飽きたら帰る。大体何時もそんな感じ。自由で居たい事を解ってくれつつも、彼奴は無用な心配でまた怒るんだろうな。鬱陶しいと思う時もあるが、彼奴が嫌いな訳では無い。その証……か何なのかは解らないが、首輪を貰った。俺は彼奴に貰ってばかりだと何時も思う。かと言って、自分以外に愛想を振り撒く事すら出来無い俺に返せるものは何も無い。まぁ猫に見返りなんて求めて居ないんだろうが。
「……騒がしいな」
大通りから外れ、細い路に入った所で何人かの人間と擦れ違った。何時も見る光景とは少し違う様で、何かを捜して居る様に見えた。多分、警察組織の奴等だろう。そう言う会話があった訳では無いが、何と無くそんな風に思った。 余り見られるものでは無い、何か突拍子も無い珍しい事が起きる気がする……と勝手に思い込み、その中の独りに着いて行ってみる事にした。結構な人数が動いて居る様で、こんな光景に出会したのは初めてだ。
「御苦労さん」
新人っぽい奴の方が面白いに決まって居る。が、相手がヤバかった時に巻き添えを喰うかも知れない。それなりに場数をこなして居そうに見える奴を捜し、わざとらしく声を掛けた。
「……何だ、野良猫か。何も持ってねぇぞ、一応仕事中だからな」
其奴は俺の姿を確認すると素っ気無く言い放った。ざわついて落ち着かない空気の中、他の奴に比べ何と無く浮いて居る様に見える。余裕があると言うか、あり過ぎると言うか、寧ろやる気が感じられないと言うか……。
「腹減って無いから。お前等、警察組織だろ。何かあったのか?」
先程から弄って居た銃を俺に向け、撃つ振りをする。一応仕事中、とは言って居たが、どう見ても暇人にしか見えない。