「違法改造アンドロイドだよ。そんなモンより生身の娘を追っ掛けたいねぇ」
違法改造……彼奴が話して居た気がする。技術と金の問題が何よりもあるから、大々的に広まる事は無いらしいけど……とか何とか。そんな話を聞く度に人間と言うのは規則やら規律やらを破りたがる生物だと思う。人間以外は破らないのかと言えば、そもそも守るべき規則なんてものは殆ど無い。
「今追ってるのも女だけど、アンドロイドには興味無いしなぁ」
「別に聞いて無いけど」
そう言うな、と笑い、良く解らない話が始まる。見分け辛いのは事実だが、やはり生身には敵わないよな……なんてやけに嬉しそうだが、猫にそんな事話したって人間の感覚なんか解る訳が無いだろう。まぁでも機械より生きて居る方が良いのは同意出来る。
「確かに人間のままだと不都合な事もあるけどな、意外と脆くて直ぐ死ぬ所とか。まぁ俺は言われるまで気付かなかったが」
この刑事の仲間も何人か改造した奴が居るらしい。外見こそ変わらないものの、全ての感覚が変わってしまう為に今までと全く同じ付き合いは難しいとの事……何て面倒臭い生き物なんだ。……生き物?
「そうまでして長く生きたがるのは何なんだ?」
死から逃げる以外の目的があるのだろうか。寿命の内では達成出来無い何か。
「さぁねぇ……壮大な野望があるんじゃないの、世界征服とか」
ますます訳が解らない。俺が思って居るよりも人間は忙しい生物なのかも知れない。
「さて……そろそろ仕事するか。猫でも良いや、其奴を見たら連絡寄越せよ。眼の下にバーコードがあるから直ぐ解る。紅いジャケットの女だ」
期待はしねぇから、と彼は暗闇へ消えて行った。連絡って……一体どうやって。