……此奴だ。こんなに近くに居るのに見付けられないとは……大丈夫なのか、この辺の警察組織って奴は。
「今日はやたら警察が居て五月蝿いね。この町も物騒になったもんだわ」
他人事の様に言う所を見ると自分が追われて居る事を知らない様だが……奴等が幾らヘボいと言っても、捜索を始めたのが昨日今日と言う事は無いだろう。
「……お前を追ってんだろ」
「あぁ……だから何度か声掛けられたのね。うん、そう言う冗談は好きだよ」
声を掛けられた事も、職務質問程度にしか思って居ないのかも知れない。曰く条件反射らしいが、声を掛けられる度に逃げて来たのだと言う。例え本人で無かったとしても怪しさ満点、追われても仕方が無い気がする。と言うか、どんな条件反射なんだそれは。
「逮捕される程悪い事したかなぁ……昨夜の部品調達した時、釣銭ちょろまかしたのがバレたとか?他に思い当たる事なんて……んー……別に聴取受ける程の事件にも逢って無いしなぁ……」
追われて居るそもそもの理由を彼女が解って居ないのか、警察が追って居るのが此奴だと言う俺の判断が早とちりなのか……何時までも話が噛み合わない。
「さっき其処でちらっと聞いただけで、俺は別に詳しい訳でも何でも無いけど。お前の改造って正規の改造なのか?」
「正規のって?どう言う事?」
あの刑事の言って居た事だが……と、軽く話してやった。違法アンドロイドの存在と、警察組織が今追って居る違法アンドロイドと外見的特徴が一致して居る事。幸いと言うか何と言うか、彼女は気を悪くするでも無く、興味深気に頷きながら聞いて居る。
「違法アンドロイド?私が?そんな事無いと思うけど」
何かやらかした犯人の九割は、そう言うものだ。
「……何処の世界も同じだな」
あの刑事にもう一度逢うかと言えば、無いだろう。わざわざ捜しに行く気も無い。期待してないとも言って居たし。