近付いて来る足音に気付き、俺は音の方を見た。血痕を追って来たのだろう、あの刑事。今まで二度取り逃がしたと言うのに、その足取りは焦る様子が全くと言って良い程見えない。これ以上逃げられないと確信して居るからか。
「奴はもう動けない、バラせる奴を寄越してくれ」
声に気付いた少女は伏せて居た顔を上げたが、抵抗はおろか刑事の姿を確認する事も出来無かった。
「改造が完全なら……こんな事考えなくて済んだのに」
刑事は背後から少女の髪を鷲掴み、頭部に取り付けられて居る二つのバッテリーを引き千切った。火花が散ったが一瞬で、少女の体は無造作に地面に転がされた。人間としての扱いでは無く、完全にモノとしての扱いだった。
「お友達が死んで悲しいか?」
気味悪いあの眼は、暗い。触られる事も抱き上げられる事も、もう無いのだ。
「友達じゃ無い。死んで、って事は此奴生きてたの?」
深い意味なんて無いだろう言葉に、同じく意味の無い言葉。結果は同じなんだから、線引きなんてどうでも良い事だ。
「さぁな……壊れた、が正しいか。まぁ違法改造の末路なんてお前にはどうでも良いだろ」
暫く中身の無い話をして居たが、彼が呼んだ解体担当の到着で俺の存在は忘れ去られた。解体の奴も半端な改造はお目に掛かる事が無い様で、何処か興味深気な所がありつつも終始微妙な表情で作業して居た。
「人間バラしてる様で気味悪いぞ」
「こんなのが出歩く事自体が先ず在り得ないよ」
「違法の癖に割としっかりした改造してるんだ、こりゃあ結構な技術者が絡んでるんじゃ無いかなぁ。心当たり無いの?」
残って居た生の部分や衣類はその場で燃やされ、血塗れの部品は彼等が持って行った。