「機械の体かー……」
彼奴は白いマグカップを片手に、俺の話を聞いて居る。その間ずっと、道端に放置されたままの黒い燃えカスが脳裏に貼り付いて居た。誰かが掃き捨てただろうか。風に飛ばされただろうか。アレが人の型をして居たなんて、何人が知って居るのだろう。
「改造自体には余り興味無いけど……そうまでしてやり遂げたい事が無いんだろうね、今の俺にはさ」
彼奴は少し切なそうに笑った。
「見返りはデカいかもだけど、現実的には厳しいと思うよ」
生死に対する疑問なんて、大抵の生物は気に掛ける事は無い。彼女が言って居た様に猫も人間も、改造する側の思いは理解出来無いと言うのはそう言う事なんだろう。もしアンドロイドになれたら、なんて考えるのも虚しくなる程に。
「今は完全なの?」
「いや、刑事に捕まって撃ち殺された。バラして処分するんだってさ」
哀しくも無いのは、偶然出逢っただけで……ただの他人だったから。
「……そっか。運が悪かったんだね、その子……」
“生の部分”が残り少なかったとは言え不運で死んだなんて、と思う所だろうが。何だか不思議な程にしっくり来る言葉だった。