そう言えば彼奴も白い服着てるなぁなんて思いながら数日振りに帰る。何時もの様に窓が少しだけ空いて居て、其処から中に入ると彼奴が何時もの様に難しい本と睨み会って居た。
「お帰り、遅かったね」
俺に気付くとペンを置き、席を立った。少し経って戻って来たその手には白い皿が二枚あり、水と喰べるものが各々にあった。
「死なない人間と殺す人間に逢った。……変だけど」
皿を床に置き、椅子に座り直してまた難しい本を手に取る。
「死なない人間?」
「本当に死なないんだ、撃たれても刺されても。人間みたいな姿はしてた」
彼奴は俺の話を聞きながら暫くはページを捲って居たが、興味が出て来たのか手が止まり、本と俺とを行ったり来たりして居た視線が俺に向いた。俺はと言うと、出してくれた皿の傍まで行ったが、誰かさんが刺されたり生き返ったりする姿を思い出してしまい、ものを喰べる気にはなれなかった。興味を持った所で悪い気はするが、話を変えよう。
「後、変わった空を見た。星座とか並びなんか無くて、夜景みたいな……多分……星空?」
「あ、人工的な星空の話を最近聞いたんだ。それの事だと思うけど……本当にあるんだね」
話す内容には何時も興味を示すが、今回は熱意があると言うか……星座とか宇宙とか、好きだから。
「其処、俺でも行ける?」
余り外出しない奴には少し遠いかも知れないが、行かれない距離では無い。けれど、行って欲しくは無い。あの街で出逢った人間は少ないが、決して安全な場所では無い事は良く解ったからだ。
「悪いけど……行き方良く憶えて無い。俺も初めて行った所だし」
「……本当に?」
「本当」
諦めてくれ、頼むから。