―――その少し後。
「ちょっと新鮮過ぎるかな。市場で買って来てくれる?」
信じられない早さで縛り上げられ目の前に出された俺に然程驚く様子も無く、にこやかに話すこの人間は料理人だとか。そして俺を捕まえた二人は此処の従業員。此奴等には普通なのか「新鮮過ぎる」ってこの言い方は……気持ち悪い。俺を捌くかも知れなかった刃物や調理器具が並んで居るのを見るだけでゾッとするが、取り敢えず助かった様だ。未だ自分の中身は見たく無い。
「市場ね」
「市場」
「生きて無い奴ね」
「解った」
見送られながら二人は再び出て行った。大丈夫なのか、色々と。
「んふふ……可愛いでしょ二人共」
「いや、全然」
二人が出て行った扉の方を見ながら眼を細めて笑う。即答で否定した俺の言葉を完全に無視して可愛いなぁ、とか繰り返して居る。此奴もヤバそうだ。
「君には御詫びしないとね」
不意に立ち上がり、棚から皿を出したり彷徨く料理人を眼で追う。視界が狭い所為で時々姿が消える度、気が変わってやられるのではと肝を冷やす。
「どうぞ」
目の前に皿が置かれた。何かが小さな山になって乗って居る。細かく裂いた肉である事は解るが……
「……あのさ」
「ん?下拵え前だから大丈夫、毒も入れて無いし。もしかして鳥嫌いじゃ無いよね」
毒って……玉葱とか?いやそう言う事では無くて。見て解るだろ、と見上げる。
「縄ほどいてくれよ……」