「……あ、そっか、開いて無かったんだね。御免御免」
窓も扉も無意識に?習慣的に?閉めたまま気付いて無かっただけらしい。逃がす気が無い癖に煽るトンデモ野郎だったらどうしようかと思ったが、少し安心した。本当に少しだけ。
「この辺に居るならまた来てよ。話し相手にさ」
「……嫌だな」
開け放たれた扉から外に出る。降り注ぐ陽射しは変わらず、先程までの騒動は本当に何だったのかと思う程に穏やかだ。振り向くと、俺用に出された筈の小さな山をつまみ食いして居た。美味し!と言う声……は聞こえなかったが、そんな顔をして居た。悪い奴では無さそうなのだが、やはり身の危険を感じる。
「あ」
……主に此奴等に対して。 降って来た声の方を見上げると、あの二人が立って居た。後ろに居る奴が何か包みを抱えて居る。買い出しから戻って来た所か、出来れば逢わずに帰りたかった。
「猫は食材にならねぇとさ」
嘘でも釘を刺して置かないと。
「そうなんだ、悪かったね。肉が少なくても骨があれば良いと思ってた」
「うん」
つい先程聞いた言葉。少しは教育されて居る様だ。残念そうに聞こえたのが気の所為ならば良いのだが。別方向に歩き出したが、近付いて来る足音がある。振り向くと包みを持った方が小走りで向かって来た。
「猫って時間を自由に出来る?」
恐らく相当なポカン顔をして居るであろう俺に、彼は好奇心(?)一杯に続ける。
「猫が時計持った写真を見たんだ。本当はどうなのかと思って」
「期待を裏切る様だけど……少なくとも俺には出来無いな」
「……そっか」
変な人間は沢山居るが、今日逢ったのはレベルが違う。再び駆け出す後ろ姿を見てそう思った。