煙管から昇る白い煙に向けられた視界に映るのは、灰色をしたキノコの森と苛立ちを誘う程に清々しい青空。
「……不味い」
芋虫は成長したら姿が変わるらしい。どんな姿になるのかも教えて貰った筈だが、然して興味がある訳でも無いので忘れてしまった。この本を持って居た誰かが言った事だと思う。ボロボロの表紙に中身も酷い有り様。内容は知らないが、こんな風になる位何度も読んだらしい。
「……いや……違う」
読んで居る振りをして居た。姿形は忘れてしまったがそれだけは何と無く憶えて居る。その時の自分に取っては大事なヒト?モノ?だったのかも知れない。こんなゴミにしか見えないものを大事に置いて居るのだから。
【Caterpiller】