酷い痛みで眠りから醒める。深く呼吸をし、それが少し引くのを待つ。苦痛混じりの吐息を洩らしながらゆっくりと視界を開いた。真っ暗闇にぼんやりと、紫色の影が浮かんで居るのが見える。あぁ何と言う事だ、とそれに手を伸ばして捕まえた。無数の刺が腕を引っ掻くがそんな事はどうでも良い。手の中の紫を暫く見て居ると、その中に黒いものが滲んだ。黒はみるみる内に増えて広がって行き、ぼやける視界を塗り潰して行く。これは未だ夢なのか、と瞬きをした時、頬に伝うものを感じた。
「……」
触れた指がぼんやりと黒く見える。それが眼から零れた血液であると気付いたのは、少し後。可笑しな色の薔薇が咲いたのでは無い。血液で滲んだ視界の白い薔薇に、また血液が落ちてそう見えただけ。新たな傷は体では無く彼の眼球に付いたのだ。
そうして、眼が殆ど見えないと気付いたのは、大分前の事だった様に思う。
【Hedgehog】