【ネルーメ/イラ】
死の香りに包まれながら、白い少年はぼんやりと虚空を見て居た。此処は黒い世界で、何をしに来たのか、自分は未だ白いままなのか、捜して居るのは誰なのか、何なのか。暫く混乱して居たのと拒絶感で時が止まった様だったが、危害を加えられる事は無い様だと解った辺りから少しずつ馴れて来たらしい。
「ワタシの可愛いコ、今日はナニカお話してくれる?」
コレもそう。恐らくゾンビか何かだろうが、良くは知らない。どう言う訳か拐われたのだが、今の所はただ監禁だけで酷い事はされて居ない。今の所は。
「カルって何?此処に白いコは居ないけどぉ」
ゾンビの言う事が正しいとすれば、彼が此処に居るのは無駄でしか無い。彼が捜して居るのは白であり、黒では無いのだから。しかし此処から抜け出すのは困難である事は既に理解して居る。白い存在は外に出た途端に標的になる。今の状況がそれ。一時的かも知れないとは言え、危害を加えて来ない者に捕まったのは運が良かったと言うべきか。