【リディカ/カルチェ】
(さっさと死んでよ……)
あの少女は何時もそう言う。きっとアレもコレも、自分の意思では無いのだろう。正確には無かった、だろうか。彼女は駆除……いや、捕獲すべきなのだろうか。本来白い存在である筈の彼女を。しかしその白は《本来は》であって、今はどうなのかと言われれば……解り易く言えば堕ちて居る。それも徹底的に。
(貴方は死んじゃ駄目だ)
それは誰の言葉だったか…… 黒い青年は少しの笑顔を見せる事も無くただ淡々と、抑揚の無い声で台本を読んで居る様な口振りで、何時もそう。時折何かを気にする様に表情を歪めるのだが、それはほんの一瞬。無意識なのかも知れない。
「……お前の所為だ」
何かを腕に刺す。体液が流れ出す。未だ温かいものが。「助けて」と言う様な声が聞こえた気がするけれど、そうしてやる事が出来無いのは次は自分かも知れないから。不思議だと思ったのは、あれ程苦痛だったその絶叫に、その瞬間に、段々と馴れて来た事。ヒトは痛みに馴れるなんて嘘だと思って居たけれど、身を持って証明する事になるなんて。
「ねぇ」
「……知らない」
何処から人間じゃ無くなるのかな