【カルチェ/フィロゾ】
カルチェがそれを持って来る事は解って居た。フィロゾの元へ行けば大抵の事は解決する、と触れ回る奴が居るからだ。真意の程は知らないが、独りでどうにか出来る事では無いのは解り切って居るし他に頼れそうな者も居ない。植物に被われた廃墟の本体は身動きが取れないが、無数の傀儡達が自由に動き回り様々な情報を集めて居り、その出入りが無くなる事は無い。今も影の様な何人かと擦れ違ったが言葉を交わす事は無く、ただ滑る様に通り過ぎただけだった。何処かへ散って行く無数の傀儡達を見送りながら、カルチェはどれかが情報を持って来て居る事を願った。
「死なせない様に……どうすれば良いのか……」
ボロボロの布にくるまれて籠に入った小さな生き物は大人しく眠って居る。
「多分……ニンゲンだと思う」
実体のある傀儡のひとりがそれを受け取る。
「ワタシも育てた経験は無いから自信は無いが……まぁやってみようか?」
「あの……もし、死んじゃったら……どうなるのかな」
「餌になるだけだろうな」
カルチェの心配を余所に賢者の答えはあっさりしたものだった。