「(今日の予定は、と……)」
少しずつ覚醒して行く意識の中で、本日の予定を思い起こす。彼の一日は何時もこれから始まる。昨日は忙しかったから、未だ少し疲れが残って居る様だが、そんな事でのんびりして居る訳には行かない。Time is money、時は金なり。今日も張り切って稼がなければ。頭の中の予定がしっかり組まれた頃、スィンドルは眼を開けた。視界に飛び込んで来たのは何時もと同じ灰色の天井。
「おはようさん」
……では無く、白と黒、それに紅だった。
「……ギャーーーッッ?!?!」
何が起きたのか理解出来ず、一瞬遅れて理解した頃には目の前にあるものを突き飛ばし、体が勝手に鉄のベッドから転げ落ちて居た。
「はっ……ロックダウン、さん……?!なな何やってるんですか、完全に不法侵入、ですよねぇ?!」
余りの突然の出来事に、スパークが弾け飛ぶのではと言う程鼓動が早い。いや、鼓動等と言うものは無いのだが、ものの例えとして。
「不法侵入?まァ仕事みたいなもんさ。……にしても良い顔だ、お前さんもそんな顔出来るんだなァ」
ロックダウンはスィンドルを見下ろし、口元をつり上げて笑って居る。完全に楽しんで居る様子に、心底腹が立つ。
「……それで?何か用があって来たんですよねぇ?貴方も私も、無駄に時を過ごせる程暇じゃ無い筈」
不機嫌な表情でスィンドルは立ち上がった。転げ落ちた時に強く打ったのか、腰の辺りが未だ痛む。
「あー、そうそう。チェーンソーがイカれちまってなァ。お前さんに修理を頼みたいんだが」
「……自分で直せるでしょう」
何時もなら直ぐ引き受ける様な簡単な依頼だが、そんな気にはなれなかった。依頼に対して感情で判断してしまう等商人としてどうかと自分でも思うが、今は些細な事の様に思えた。