「まァそう言ってくれるな。自覚してねェ様だが、宇宙中を駆け回るあんたを捕まえるのはなかなか骨が折れるんだぜ?」
それで先程の行為に及んだと言う訳だ。直接追い掛けなくとも、捕まえる手段は幾らでもある筈なのに。このロックダウンと言う奴はつくづく何を考えて居るのか解らない。
「大方、修理に使うパーツが足りないんでしょう。貴方のは特殊ですからねぇ、自分で揃えるより此方の方が安上がりですよねぇ?」
「流石、解ってるじゃねェか。引き受けてくれるな」
「えぇ勿論。引き受けますよ、他ならぬロックダウンさんの依頼ですから」
スィンドルは差し出された左腕を分解し、大破したチェーンソーを取り外した。辛うじて原型は保って居るが、大掛かりな修理になりそうだと予想がつく。何をどうしたら此処まで破壊出来るのか……仮にも自分の片手を。
「えー、基本料金にパーツ代、その他諸々……まぁざっとこんなもんですよねぇ、多少上下はしますけど。因みにお急ぎで?」
胸部の多次元倉庫から取り出したパネルに見積もりを打ち込み、ロックダウンに向ける。彼はさらりと眼を通したが疑いの眼でもう一度確認し、驚きの声を上げた。
「美味い話が何時飛び込んで来るかも知れんからな。早いに越した事は無いが……ちょっと待て、何時もの倍近くねェか?その他諸々って何なんだよ?!」
形勢逆転、今度はスィンドルが口元をつり上げて笑った。
「おや、解りませんか?不法侵入と私を驚かせた事に寄る精神的苦痛に対する慰謝料、と言った所です。当然、ですよねぇ?」
その笑みを向けてやると、ロックダウンはやられたと言わんばかりに小さく溜息を吐いた。
「慰謝料、ねぇ……」