何より、屁理屈込みでスィンドルに口で敵う筈も無い。慰謝料とやらは腑にちないが、自業自得と言えばそうなのかも知れない。……いや、納得はして居ないが。
「了承頂けます?」
問い掛けるその表情は、報酬への執着がありありと浮かんで居る。笑っては居るが、拒否しようものなら彼の得意な話術で叩きのめされるだろうと言う予想は容易に出来た。前述の通り、口で彼に敵う筈が無いのだ。
「お前さんも人が悪いな、拒否権なんて初めから無いんだろう」
ロックダウンは未だ何か言いた気だったが、スィンドルの御機嫌な声に遮られた。
「あー解ってますよ。今の手持ち、それ程無いんでしょう?解ってます。何時もだったら無理にでも頂くんですがね、今回は私の方にも僅かながら非はありますから。逃がした獲物を捕まえて、それからで良いですよ」
「……御親切にどうも。有難くて涙が出るね」
僅かながら、とは良く言うものだ。武器の事も懸賞金の事も、スィンドルは知って居たのだ。彼の思惑に何時から嵌まって居たのだろうか。此奴、叩き斬ってやろうか……と腹の底で悪態を吐きつつ、再び請求書に視線を落とす。
「そんな疑い深い顔しないで下さいよ。貴方が自分に必要な分しか持って居ないのは知ってます。そんな相手に高額な報酬なんて、要求しませんよねぇ。普通なら」
「あー、解ったよ解った……直ぐ捕まえてやるから待ってろ」
言いたい事は解って居る。自棄気味に答えると、スィンドルは満足気に眼を細める。ロックダウンの苛立ちが少し増した。これは早々に済まさないと更に面倒な事になりそうだ。延滞料……は考え過ぎだろうか。 破壊しようかと言う程力任せに扉を叩き付け、ロックダウンは出て行った。