「む、大丈夫か?顔色が余り良く無い様だが」
「あぁ……平気だ」
苦笑して、彼は私の肩を軽く叩く。再び口を開いて何か言って居る様だが……何も聞き取れない。思考だけが何処かに行ってしまったかの様に、ぼんやりと視界が霞んで来る。
安息等、無い。
この無意味に思える戦場で生まれ、育ったのだ。此処が安住の地で無くて、何だ?そう思わなければならないのでは……?
「おい、聞いて居るのか?」
「あ……あぁ……すまない。少し考え事をして居た」
彼の強い口調に、強制的に意識を引き戻される。咄嗟に言い訳をしたが、恐らく無意味だろう。彼は小さく溜息を吐いて言った。
「悲鳴に一々動揺して居る様では、何時まで経っても未熟なままだぞ……らしくも無い」
私は彼を見る事が出来無かった。彼は余りに強く、遠い存在。その意思の強さは、私の目指すべき姿そのものであった筈なのに。
「私は……貴方の様にはなれない」
唐突に、何だ?
頭を抱え、自分でも嫌になる様な泣き言を言って居る。こんなモノを聞かされた彼は、さぞ困惑して居るだろう。だが、情けない事に止められそうも無かった。頭の中が灰色に染まり、黒に染まり……
「嫌……なんだ……悲鳴も、血の匂いも……斬り刻む感触も……」
ネガティブで一杯になる。
「あの方の命令も……」