「良く動いて居られたなぁ……正直、見なきゃ良かったって感じ」
「そんなに酷いんですか?」
体内組織の消耗に気付かなかったのは、体を使って居るのが本人では無いからだろう。オムニトリックスに入って居る今は宿主に《体を貸して居る》状態で、意識はほんの僅かが残るか、ほぼ停止してしまう。例えばだが、どんな酷い戦い方をされても自分では制御出来無い事になる。エイリアンと人間とでは考え方も違うし、戦い方も違うのだ。
「メンテナンスしなきゃいけない種族も居るんだよね、それが君……っと」
説明しても解らないだろうから。兎に角お前には必要なんだと濁して置いた。自分が目の前に居る奴に造られた兵器だなんて、易々と受け入れる事なんて出来る筈が無い。突き詰めて行けば自分も含め兵器である事には変わり無いのだが、それとこれとは訳が違う。
「今の宿主、無茶する事もあるから。気にして置いた方が良いよ」
「自分の体なのに知らない事ばかりと言うのは妙な気分です……」
本来は、その知らない事が正しい反応だったりするのだが。命令を聞くだけの知能を持たせ、理解させて動かす。その行動は全て管理されて居るからメンテナンスも全てに行き届く。万が一漏れた個体があったとしても、今回の様に調子が悪いと気付いた頃には既に手遅れ。本来はそこで破棄なのだから、先程のグレイマターの「見なきゃ良かった」に繋がる訳だ。