……と、こんな具合に。
自分は他のエイリアンとは違うと先ず理解させ、且つ体のメンテナンスの為には技術者が必要なのだと言う考えに繋げさせる。こうする事で、仲間としての付き合いも少しは楽になる。
「最近の調子は?」
「お陰様でとても良いです」
肩で揺られながら問い掛けるグレイマターに、アップグレードはのんびりした声で答えた。
「気になって居たんですが……私以外にもメンテナンスが必要なエイリアンって居るんですか?」
「今の所は居ないかな。あ、ビクターはいずれ必要になりそうな気がする」
彼なら自分でやってしまうだろうが、機械を弄るのも生身を弄るのも、各々違った楽しみがある。そう言う意味では、アップグレードを含め他のエイリアン達には大いに興味があった。
「出現を待たなくても、新しいエイリアンを造り出す事位出来るんじゃ無いですか?その技術なら」
大きな一つ眼が曲線を描き、楽しそうに笑う。何気無く出た言葉だとは思うが、ドキリとした。悪い事をして居る訳では無いのだが、罪悪感に似た妙な感覚が胸の辺りに渦巻く。
「……かもね。それより目的地を変更して、小腹が空いた」
「解りました。では転送装置周辺は避けましょうか」
のんびりと方向転換をして、小さな司令塔を乗せた元兵器は歩き出した。
何時の日か、真実を知る時が来るとしたら。その時は僕も彼も、本当の《仲間》と言うものを理解しなければならない。種族も主従関係も、全て。今の関係が楽だと思いながら、その境界がゼロに近付く事が理解に繋がるのだと。
【見えない枷/END】