腹いせに、と言う訳では無いのだろうが。元々穏やかな方では到底無いのだが、此処最近のヴィルガクスの荒れ様は尋常では無い。側近であるルーテナントでさえ、時折命の危機を感じる程である。それと言うのも、宇宙最強と言われる兵器、オムニトリックスの所為。アレが手に入らないから苛々して居るのだ。恐らく。
「(次は何処を……)」
ヴィルガクスは巨大なモニターをじっと見詰めて居る。次に征服する星か、はたまた破壊する星か。機嫌に任せて破壊されるとなると、流石に住人が哀れに思えて来る。……妙な話だが。
「ヴィルガクス様、御体の方はもう良いので?」
「下らん事に気を回すな。しかし、またあのチキュウへ行く事になろうとはな……忌々しい」
屑星め、と悪態を吐き、再生させたばかりの腕に力を込める。其処等の機器を殴り付けて壊しやしないかと、内心ヒヤヒヤしながらルーテナントは作業を進めて居た。唐突に、モニターに妙な影が映り込む。小惑星では無い様だ。
「未確認の船が急接近!」
撃ち落とせ、とヴィルガクスが指示した瞬間だった。轟音が響き渡り、船体が大きく揺れた。
「船体損傷!先程の小型船の襲撃の様です!」
真っ紅なライトが船内を照らし、ブザーがけたたましく叫ぶ。ルーテナントを始めとするクルー達は、駆け回りながら対処に追われる。当のヴィルガクスはと言うと、先程のモニターを見たまま不機嫌な表情で紅い文字を見て居る。
「ヴィルガクス様ッ……」
「愚か者を捕えよ……私の前に連れて来るのだ!」
地響きが続く船内からの脱出を促そうとしたルーテナントだったが、それを掻き消す主の声に一瞬怯んでしまう。棄てなければならない程の損傷では無いが、一時的な避難は必要だと考えたからだ。しかし直ぐ様我に返り、戸惑いを出来る限り隠して返事をした。