例え難い不快な音と匂い。頭がくらくらする様な真っ青な血液。司令塔を無くした体は、ドロリとした青い海に力無く倒れ込む。ヴィルガクスは立ち上がり、手に持って居た頭部を投げ棄てて返り血を軽く払った。
「ロットオージェスの血液は……変わった色をして居るのですね……」
ルーテナントは興味深気に青く濁る海を眺めて呟いた。
「充分手加減してやったと言うのに、退屈凌ぎにもならぬわ」
ヴィルガクスはモニター室を後にする。入れ替わる様に、先程出て行ったクルー達が戻って来た。手には各々清掃用具と思われるものを持って居り、死体処理が速やかに行われる。
あの青年の死後、空虚を見詰める三つの瞳は美しかった紅を失った。あの紅が永久保存出来れば……と思ったが、その技術が出来た所で紅い眼のエイリアンはもう居ない。惜しい事をしたとルーテナントは小さく溜息を漏らし、再び巨大なモニターに向かった。
【無限の支配者/END】