「……ンだよ、ケチー!!」
扉に向かって叫ぶが、返事は無い。キャノンボルトの腹の上でXLR8はブツブツと文句を垂れ始めてしまった。放って置くと長くなりそうだが……
「あのさXLR8、退いて欲し……」
「別に悪い事してる訳じゃ無いのに毎回摘み出さなくたって良いじゃん!!」
既にキャノンボルトの声は届いて居ない。暫くはこのままで居る他は無さそうだ。上半身を起こして居たキャノンボルトは、諦めてそのまま寝転んだ。時折、苛立つXLR8の尻尾が彼の顔面を軽く叩く。幾ら掴んで避けても、数秒後にはまた戻って来る。退屈凌ぎにはなりそうだ。但し叩かれなければ、だが。
「ねぇ、君達さ……」
各々別のものを見て居た二匹の視線が同じ方に向く。足音を立てる事も無く此方に近付いて来るのは、ベンウルフだった。
「取り敢えず其処、退いた方が良いんじゃ無いかな」
ウルフは天井を指しながら言った。XLR8とキャノンボルトがその先を見ると、今自分達が居るのは、この広間のほぼ中央である事に気付く。即ち、転送装置の真下である。二匹の眼に明るい黄緑色が映り込んだ。
「もし今呼び出しがあったら、同時に飛び出す事になるのか?」
XLR8の言葉は、何処までが本気なのか読み辛い。が、キャノンボルトは構わず突っ込む。
「いや、この位置だったら行くのはお前じゃ無いか?」
「……あぁ?」
キャノンボルトが再び上半身を起こすと、XLR8は彼の上から飛び降りた。そしてまた文句か何かを並べながら、珍しくゆったりと歩いて行く。それをキャノンボルトが追い掛けて行った。