反射的に、身を護ろうと手を翳す……が、護ってくれるものは何も無い。レイヴンは地面に落ちたまま、頭を抱えて蹲った。
力は使えない。
飛べもしない。
逃げられない。
どう考えても、マイナスな事しか浮かんで来ない。こんな無防備なタイタンズのメンバーを眼にする事は早々無い。邪魔な存在ならば、消すのは今。
……確実に、殺される。
生身では無いにしても、精神世界で死んでしまえば体はマトモで居られる筈が無い。
「(何が……起きてるの……)」
無意識に小さく呻き、混乱気味の頭を整理しようとした。襲って来る筈の死に恐怖しながら、相手が静か過ぎる事にレイヴンは気付けずに居る。待ち兼ねた様に、低い声が彼女を貫く。
「何か勘違いして居る様だが。私は君に何もしない」
「嘘よ!あんたはそうやって、何時も人を惑わせる……!」
「何時も?君達に嘘を吐いた事は無いと思うがね」
その言葉に、恐る恐る頭を上げた。一瞬見えた彼の右手は、此方に差し出されたまま。スレイドは未だ混乱の抜け切れないレイヴンの腕を掴み、立ち上がらせた。
「君も気付かなかった訳では無いだろう……気付かない筈が無い。闇の世界は君の唯一の安息の場だ」
よろめきながら立ち上がり、辺りを見回す。スレイドの言う通り、安息の場である筈の闇の世界は、此処には無い。力を封じられて居る所為で反応は薄いが、明らかに何かが違う。
「独りの精神に複数の意思が存在する事は在り得ない……通常は。だが、君の力があればどうだ?」