「あぁ……暇だ」
口に出しても何も変わらないが、自然と出てしまう。
「暇過ぎて死にそうだ。誰か俺の相手をしろよ……あぁ暇だ」
独り言を垂れ流しながら、XLR8は転送装置の真下に座り込んで居た。誰が呼び出され様が知った事では無い。今一番暇で死にそうなのは俺、だから行くのは俺!……と訳の解らない事を呟き、溜息と共にその場に寝そべる。暫しそうして居ると、何処かの扉が開く音がした。パッと上半身を起こすと、ビクターが部屋から出て来たのが見えた。手には見た事の無い銃を持って居る。
「何だそれ、新しい玩具か?」
長い尻尾を左右に振りながら、好奇心一杯な視線を向ける。ビクターはXLR8に気付くと、ゆっくりと歩きながら銃口を向けた。引き金に指が掛かって居るのが見える。
「本当に撃つ時以外は、引き金に触ったら駄目なんだぞ」
至近距離で、銃口と眼が合う。
「人間のルールなのに良く知って居るな、その通りだ。賢いじゃないか」
馬鹿にしてんのかよ、とXLR8が呟き、銃に向かって手を伸ばす。その手が届く瞬間、ビクターは引き金に掛けた指に力を込めた。銃口から飛び出した蒼白い色が視界いっぱいに広がり、眼球を刺す様な眩しい光に頭がくらくらする。それはXLR8の頭を難なく突き抜けた。唐突な出来事に、自慢の脚で逃げる事も出来無かった。
「何……うぁああっ?!」
眩しさ以外は何も感じないと思ったのだが、光が突き抜けた瞬間、痺れる様な感覚と共に体の力が抜けた。視界が揺らぎ、自分の体が床に叩き付けられる。何が起きたのか、理解する間も無かった。