あー、俺は死んだのか。
うっすらと眼を開けると、見慣れた転送装置が見えた。死ぬ前に居た場所と同じだ。死んでもオムニトリックスの中か……と、鈍る頭でぼんやり考える。ビクターの野郎、此処まで俺の事嫌いだったのか。新入りの癖に思い切った事をよくも……と言うか、そんなに嫌われてたのか。流石にちょっとショックだ。
「……何時までそうして居るんだ、大した事は無いだろう」
噂をすれば、ビクターの声。
「……ん?あれっ?!」
パッと体を起こすと、呆れ顔のビクターが居た。XLR8の眼には死……いや、倒れる前と全く同じ光景が映って居る。
「凄ぇビリビリ来たけど……死んで無いんだな、俺」
「当たり前だ」
ビクターは銃を投げて寄越す。つい先程まで死んで居たのが嘘の様に復活したXLR8はそれを受け取ると、好奇心に満ちた眼で様々な角度から見たり構えたりしてみた。
「わぉ……凄ぇクール!」
普段武器を使う事の無い彼が、この手のモノを触る機会は早々無い。それは普段の行動からも見て取れる。ビクターの部屋での振る舞いもその一つ。ならば与えてみよう、とビクターは思った。少なくともその玩具に飽きるまでは平和に暮らせるのではと考えたのだ。
「なぁ、コレ」
「お前にやる」
上手く行く事を祈りつつ。XLR8の表情が子供の様に輝く。そして、標的を求めて走り去って行った。
「お前、意外と良い奴だな!」
標的になるのは恐らくフォーアームズやキャノンボルト、運が悪いワイルドマット辺りだろうが、彼等には犠牲になって貰おう。何事も、多少の犠牲は付き物なのだ。