「勘弁して下さい……本当にこれは……洒落にならない……」
痺れる体を引き摺りながら、アップグレードが苦しそうに言った。彼の前にはXLR8。先程手に入れた玩具を片手に実に満足気な笑いを浮かべて居る。
「だらしないぞ、ヒーローの癖に」
無邪気と言うか、悪意と言うか。危険な玩具を手に入れてしまったXLR8に最初に出逢ってしまったのが何よりの不運である。体内構造の所為かは不明だが、あの玩具で撃たれると体へのダメージが思った以上に大きい様だ。宿主と融合して居る時は、感電しても大したダメージにはならなかった筈なのだが。
「遊びってレベルじゃ無いです!序でに言いますけど、私はその手のモノに弱いんです、知っ……」
「うん、良く知ってる」
しれっと言ってのけるXLR8に、アップグレードはほんの少し、苛立ちを感じた。仕返しをしてやりたい所ではあるが、此処でプラズマキャノンを撃って良いものか……自然とアップグレードの大きな一つ眼が、XLR8の右手に握られて居る玩具に向いた。どう身を守ろうかと考えるアップグレードを他所に、XLR8は背後の電子音に気付いて振り返る。
「今日は余り退屈そうじゃ無いな、XLR8。遊んで貰ってるのか?」
声だけが聞こえる……と言うのは冗談で。小さなグレイマターが自室から出て来た所だった。
「違う違う、俺が遊んでるの。新兵器を手に入れたからな!」
右手に持ったそれをグレイマターに向ける。銃口を向けられたグレイマターは一瞬驚いたが、直ぐに何時もの落ち着いた彼に戻った。
「新兵器って……アップグレード?」