グレイマターが思いも寄らない言葉を口にしたが、直後にXLR8はそれを理解する事になる。
「……は?アップグレード?何言っ……うわわっ?!」
明るい黄緑色のラインが走る黒い液体に玩具が飲まれて居た。同時に右手が飲まれそうになって居る。咄嗟に離してしまったそれは何やら奇妙な形に変化し、触手の様な脚が四本生えた。その脚で自立した玩具はXLR8に銃口を向け、その直ぐ上に大きな一つ眼が現れる。
「金属製だったのが幸いでしたね。さぁ遊びましょうか?XLR8」
「それは俺が貰っ……おわっ?!」
不意に足元に煙が立ち上る。XLR8もアップグレードも、不適に笑う。そして、何方からとも無く攻撃と言う名の遊びが始まった。普段は理性と言う枷が付いて居ても、彼等には役に立たない事がある。それが遊びであったとしても、本能が全面に働くからだ。更に今は宿主の意識の介入も無い。
「遅い遅い!掠りもしないね!」
撃ち出される銃弾の間を、踊る様にすり抜けるXLR8。その表情には余裕が見て取れる。するとアップグレードは触手の腕を彼に向かって伸ばした。
「では……こう言うのは」
触手はXLR8の尻尾を掴まえた。一瞬怯んだ彼を宙吊りにし、銃口を向ける。銃弾が発射されたと同時に、XLR8は全身のバネを使って体を振り、触手から脱した。
「……どうするって?」
わざと捕まったり攻撃を受けたりしながら、二匹は中央フロアを駆け回る。彼等の実力差は殆ど無く、決着は永遠に着かない。
「(転送装置の真下だけど……今アップグレードが呼び出されたら、アレごと行くんだろうか)」
流れ弾を避けつつ、グレイマターもまた楽しんで居る様子。