「実は寂しかったりしない?」
部屋の中は外の騒がしさが嘘の様に静かだ。それが微かに聞こえるのはウルフの聴力が優れて居るからで、部屋の主であるビクターには聞こえない。
「そんな訳があるか。寧ろこれを待ち望んで居た位だ」
椅子に座り、細かい文字がびっしりと並ぶモニターを見詰めながらビクターは無愛想に答えた。そう?とウルフは彼の直ぐ後ろに立って同じモニターを見て居るのだが、内容は全く理解出来無い。
「気になって居たんだが」
不意に、ビクターがモニターから視線を逸らした。オムニトリックスと同じ黄緑色の眼が灰色を映す。ウルフは尻尾を揺らしながら軽く首を傾げ、ビクターの言葉を待って居る。
「お前こそ何時入って来るんだ。大抵、黙って入って来るだろう」
揺れて居た尻尾が止まった。少しの沈黙の後、笑い声と共に宥める様に肩に手が置かれる。
「そんなに自分を隔離しなくたって良いだろ?それに僕は人畜無害だし」
「何処で憶えたんだそんな言葉。無害なエイリアンなんて何処に居る、お前も特別扱いはしないぞ」
首元を掴まれたウルフは、言い訳をする間も無く部屋から摘み出された。騒がしかった中央フロアが一瞬静まり返り、其処に居た三匹が同時にウルフに視線を向ける。一匹は銃口だが。
「え……嘘っ?!」
その内の二匹が顔を見合わせて不適に笑う。ウルフの制止も虚しく、背後の扉が閉まったと同時に二匹が襲い掛かって来た。
「ちょっ……酷いよビクター!!」
白い扉に向かって叫ぶが、部屋の主にそれが届く事は無かった。
【take it easy./END】