『アンタ達、その汚らしい手、放しなさい』

兎を引き摺っていた兵達に向き直る。男達は一瞬固まっていたが、すぐさま気を取り直して大きな声を上げた。余程上官を殺されたのが気に触ったのか、兎を放り投げ、私に向って汚らしい言葉を吐いている。頭の悪そうな、低俗な言葉ばかり…。

私はうんざりして、握り締めたままの茨を鞭の様に振り上げた。数回振り回すと、男達の顔や腕に幾つもの傷ができた。じわりと血を浮かばせ、細く肉が盛りあがっている。男達は腰の剣を抜いた。反撃に出るつもりだろう。私は足元に転がっている男の腰から剣を奪って構える。兵士達は揃って鼻で笑った。

『良いから掛かってらっしゃい』

私の態度は鼻に付いたらしく、男達は顔を顰めた。そして一人が剣を振り翳して飛び掛る。私はそれが振り下ろされるよりも早く、男の喉元目掛けて切っ先を突きだした。男が飛び込んできた勢いで、男の喉に深々と刺さってゆく。剣を伝い、肉を裂く感触が私の手に届く。すっと身を引きながら剣を抜くと、夥しい程の赤が弾け飛んだ。辺りに鉄っぽい香りが立ち込める。

残るは、後二人。書状を巻いていた男は腰が抜けたかの様にその場にへたり込み、もう一人の男は剣を持ったまま怒りに震えて居た。私は剣を持った男に向って微笑む。罵りの言葉を吐く男に剣を構えた。

『トランプなんて、斬ってから使うものでしょ？』

そう言う私を男は顔を真赤にして怒鳴りつけた。私は怒鳴るだけで一向に斬りつけてこない男に痺れを切らし、剣を横に大きく振った。男の剣に当り、高い金属音が響く。それを払おうと男の剣を握る手の力が緩む。それを見計らい、私は重なった剣を小さく回し、勢いをつけて払った。男の手から剣が離れ、中を舞う。剣は蹲ったままの男の傍に突き刺さった。

私は剣を構え、現状に目を丸くしている男の懐目掛けて突っ込んだ。全体重をかけて剣を押しこむと、男の左胸に深く沈んでく。男の喉からくぐもった、言葉ともつか無い音が漏れる。バランスを崩し後ろへ倒れ、私はそのまま男の胸から剣が抜けるに任せた。