どさりと男の体が地に崩落ちた。その下から徐々に赤い染みが広がる。蹲る最後の一人が大きな悲鳴を上げた。私は喚き散らしながら後退る男へと近づき、胸ぐらを掴んで睨み付ける。ぐっと引き寄せ耳元に優しく囁いた。

『アンタは殺さない』

男の怯えた瞳が恐る恐るこちらを見上げる。ぐだぐだ何故かと問う男に、私はにっこり笑って言葉を続けた。

『これを城へ持って帰る奴が必要だからに決まってるでしょ。それに、あのクソ女王に言付けがあんのよ。』

男は自分がこれから仲間の死体を運ぶのだと聞かされて、見る見る内に青ざめていった。変わり果てた仲間の姿に目をやり、頭を抱えて震えている。私はその男の髪を鷲掴み、顔を上げさせた。

『あの兎は私のモノになったから、もう戻らないと伝えなさい。もし今後手を出すような事があったら、その時は……』

一度言葉を切り、掴んだ男の頭を木の幹に押し付けながら言い放つ。

『――私が女王の首を跳ねてやるわ！！』

男はぽろぽろと涙を流し、必死で頷く。私は今一度強く念を押してから、ようやく男を解放した。自由になった男は地を這う様に、死んだ男の傍まで体を引き摺って行った。

泣き喚きながらも、男は亡骸の一つに手を掛け、城への道を歩き始める。どうせなら三つ共一度に運ばせたいところだが、あの様子では今抱えている絞殺死体一つ運ぶのが精一杯といったところだろう。

私は兎の姿を探す。光り輝く緑の上に、真っ赤な血溜りが二つ。激しいコントラストに軽い眩暈を覚えた。その奥の巨木の幹の陰に、白く長い耳が揺れている。蹲り震えて居る兎の傍へと、ゆっくり歩み寄った。