短編
※うちよそ?とつけて良いかわからないぐらい我が子語り。
頂いた小説の幸サイド&呟きの続き的なものと思って読んでください(笑)
幸は氷柱という女の子が羨ましかった
(羨ましかった…いえ…違う…眩しかった…)
氷柱の存在は妖魔界へ時折足を運ぶ母_政_の付き人たちが面白半分の噂話で聞いた話を土産話で聞いていたので、少し前から“氷柱姫“という存在は知っていた。幻想的な美しさを持つ儚い美姫。その見目の麗しさと雰囲気から彼女がいる空間を極楽浄土、もしくは楽園と呼ぶ者もいなくはない。
その噂を聞いたときから幸は氷柱に興味があったのは確かだった。
実際に出会い何度交流を交わしていくうちに妖魔の概念上正確な年齢は計れないだろうけど、外見や言動からおそらく自分よりは年若い…と感じた。
種族は違えど自分を“姉“のように慕う氷柱に対して可愛らしい、大事にしたい、という情が芽生えたものの、一緒にいることの息苦しさを感じていた。
氷柱本人はさほど気にしていない_幸は少し異質に感じながらも自分もかなり異質故に他人の家庭事情はあまり強く言えない_が規制が厳しく限られた空間での不自由な生活を過ごす氷柱に対して羨ましいと思った。
一見鳥籠のような可哀想な立場であるも、見方を変えれば【鳥籠】はこの純粋無垢な美しい姫を外敵_もっと言えば_災厄や最悪から護る【結界】のような役割にも見える。
世間知らず故に純真で狭い世界の中で綺麗なものだけを見続けている、それが許されている氷柱が羨ましかった。
幸が氷柱位の年齢の時には現在の周りが求め理想とする“幸“という偶像が出来上がっていた。
洗礼された立ち振舞い、何処に出しても適応できるように言語や常識マナーなどを使いこなし、淑女の模範的な存在。
現女帝の唯一の子供として恥じないようにと英才教育を叩き込まれていた。哀れなことに幸は政のように天才ではなく器用でもない。政なら1日で出来ることも幸だと1週間かかる。自分の不器用さや要領や物覚えの悪さに挫けそうになるものの、時間は沢山あった。忙しい政に師事を受けることはなかったが代わりにその道の、各々の生涯をかけて極めた匠たちから学び習えたのは皮肉にも幼少期に己が嫌がっていた“特別“であったからである。同時に彼らの最後も見届けてきた。
特別な生まれでなければこれほど悩むこともなく、見たくもない現実を知ることもなく氷柱のように無垢なまま自分の心に素直でいられただろうか?
否、閻魔大王のように過保護に大事に鳥籠に入れられ護られていれば何も知らずに苦しむことも悩むこともなかったのだろうか?
(馬鹿馬鹿しい…)
そんなくだらない分岐点やタラレバなど考えても仕方ない。他人にも自分にも厳しい母がそんなことを許すことをするはずがない。
今でこそ悩むことはなくなったが幼少時期はあった。何故普通の家に生まれなかったのか。どうして求め定められた役目を担う子供として生まれたのか。好きに自由に使える時間がないことは頭では理解ができず気持ちがついていけなかった。
ある日、気持ちの限界が来てしまい、忙しい身でありながら娘を心配して様子を見に来てくれた母にやつあたりをしてしまった。
「枯葉が教えてくれた本が読みたいの。一樹兄様と歩摘兄様たちが貸してくれた玩具で遊びたいの。四乃が庭園の蓮の花が綺麗に咲いたから見に行こうって誘ってくれたの。なのにお母様もお父様もお稽古を優先だから駄目っていうの?どうして?どうして私ばかりあれもダメこれもダメっていうの?」
「幸、貴女は他の子達と違うの。生まれが特別なの。周りと同じように出来ないの。理解して」
「特別じゃないもん!お母様は私のことを特別特別ってよくいうけど、特別だと思ったこと無いもん!」
「お願い幸、言うこと聞いて、お願いだから」
「私はただお母様から生まれただけなの!特別じゃないの!」
「幸」
名前を呼ばれいくら感情的になったとは言え言い過ぎたことに怒られると同時に(叩かれる!)と思い体を小さくし目をつむったが大きな衝撃ではなく優しく包み込まれた。
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
その時初めて母が泣いている姿を見た。
賢帝・理想の女性像としてこの世界の唯一絶対の神。慈悲も慈愛もない平等な女傑、と言われている女性が泣いていた。
「ごめんなさい…自由に子供らしい生き方をさせられなくて。普通に健康で穏やかに生きているだけで良い、そう言える母親の所じゃなくて、ごめんなさい」
(思えば最初で最後でしたね…お母様が泣いている姿を見たのは)
慰める言葉も慰め方もわからなかった子供でもその時自分達は普通の母娘ではいられない。愛情の与え方も与えられ方も知らない。それでも、お互いに“特別“という立場は捨てることは許されない。こうやって自由に過ごす時間も、自分の世界に帰れば無くなってしまう。
「それででして…って!わ、私ばかりお話していてすみませんっ!退屈されないですか?!」
「ふふ、大丈夫ですよ。氷柱ちゃんのお話聞いていて楽しいですから。何より楽しそうに話す氷柱ちゃんが可愛らしくて退屈していることはありませんわ」
「も、もぉ~!!」
林檎のように真っ赤になる氷柱は同性でありながらも可愛らしいと思うし庇護欲にかられる、まさに“姫“と呼ばれるに適している女の子であろう。自分がお姫様でいられた魔法は時間が切れている。なにより夢を見る歳ではもうない。
今回氷柱に似合うと思い選んだネモフィラの花言葉は【可憐】と【貴方を許します】
願わくば可憐な貴女と過ごせるこの時間だけは何者でもない“幸“という存在でいられることが許されますように。
頂いた小説の幸サイド&呟きの続き的なものと思って読んでください(笑)
幸は氷柱という女の子が羨ましかった
(羨ましかった…いえ…違う…眩しかった…)
氷柱の存在は妖魔界へ時折足を運ぶ母_政_の付き人たちが面白半分の噂話で聞いた話を土産話で聞いていたので、少し前から“氷柱姫“という存在は知っていた。幻想的な美しさを持つ儚い美姫。その見目の麗しさと雰囲気から彼女がいる空間を極楽浄土、もしくは楽園と呼ぶ者もいなくはない。
その噂を聞いたときから幸は氷柱に興味があったのは確かだった。
実際に出会い何度交流を交わしていくうちに妖魔の概念上正確な年齢は計れないだろうけど、外見や言動からおそらく自分よりは年若い…と感じた。
種族は違えど自分を“姉“のように慕う氷柱に対して可愛らしい、大事にしたい、という情が芽生えたものの、一緒にいることの息苦しさを感じていた。
氷柱本人はさほど気にしていない_幸は少し異質に感じながらも自分もかなり異質故に他人の家庭事情はあまり強く言えない_が規制が厳しく限られた空間での不自由な生活を過ごす氷柱に対して羨ましいと思った。
一見鳥籠のような可哀想な立場であるも、見方を変えれば【鳥籠】はこの純粋無垢な美しい姫を外敵_もっと言えば_災厄や最悪から護る【結界】のような役割にも見える。
世間知らず故に純真で狭い世界の中で綺麗なものだけを見続けている、それが許されている氷柱が羨ましかった。
幸が氷柱位の年齢の時には現在の周りが求め理想とする“幸“という偶像が出来上がっていた。
洗礼された立ち振舞い、何処に出しても適応できるように言語や常識マナーなどを使いこなし、淑女の模範的な存在。
現女帝の唯一の子供として恥じないようにと英才教育を叩き込まれていた。哀れなことに幸は政のように天才ではなく器用でもない。政なら1日で出来ることも幸だと1週間かかる。自分の不器用さや要領や物覚えの悪さに挫けそうになるものの、時間は沢山あった。忙しい政に師事を受けることはなかったが代わりにその道の、各々の生涯をかけて極めた匠たちから学び習えたのは皮肉にも幼少期に己が嫌がっていた“特別“であったからである。同時に彼らの最後も見届けてきた。
特別な生まれでなければこれほど悩むこともなく、見たくもない現実を知ることもなく氷柱のように無垢なまま自分の心に素直でいられただろうか?
否、閻魔大王のように過保護に大事に鳥籠に入れられ護られていれば何も知らずに苦しむことも悩むこともなかったのだろうか?
(馬鹿馬鹿しい…)
そんなくだらない分岐点やタラレバなど考えても仕方ない。他人にも自分にも厳しい母がそんなことを許すことをするはずがない。
今でこそ悩むことはなくなったが幼少時期はあった。何故普通の家に生まれなかったのか。どうして求め定められた役目を担う子供として生まれたのか。好きに自由に使える時間がないことは頭では理解ができず気持ちがついていけなかった。
ある日、気持ちの限界が来てしまい、忙しい身でありながら娘を心配して様子を見に来てくれた母にやつあたりをしてしまった。
「枯葉が教えてくれた本が読みたいの。一樹兄様と歩摘兄様たちが貸してくれた玩具で遊びたいの。四乃が庭園の蓮の花が綺麗に咲いたから見に行こうって誘ってくれたの。なのにお母様もお父様もお稽古を優先だから駄目っていうの?どうして?どうして私ばかりあれもダメこれもダメっていうの?」
「幸、貴女は他の子達と違うの。生まれが特別なの。周りと同じように出来ないの。理解して」
「特別じゃないもん!お母様は私のことを特別特別ってよくいうけど、特別だと思ったこと無いもん!」
「お願い幸、言うこと聞いて、お願いだから」
「私はただお母様から生まれただけなの!特別じゃないの!」
「幸」
名前を呼ばれいくら感情的になったとは言え言い過ぎたことに怒られると同時に(叩かれる!)と思い体を小さくし目をつむったが大きな衝撃ではなく優しく包み込まれた。
「ごめんなさい…ごめんなさい…」
その時初めて母が泣いている姿を見た。
賢帝・理想の女性像としてこの世界の唯一絶対の神。慈悲も慈愛もない平等な女傑、と言われている女性が泣いていた。
「ごめんなさい…自由に子供らしい生き方をさせられなくて。普通に健康で穏やかに生きているだけで良い、そう言える母親の所じゃなくて、ごめんなさい」
(思えば最初で最後でしたね…お母様が泣いている姿を見たのは)
慰める言葉も慰め方もわからなかった子供でもその時自分達は普通の母娘ではいられない。愛情の与え方も与えられ方も知らない。それでも、お互いに“特別“という立場は捨てることは許されない。こうやって自由に過ごす時間も、自分の世界に帰れば無くなってしまう。
「それででして…って!わ、私ばかりお話していてすみませんっ!退屈されないですか?!」
「ふふ、大丈夫ですよ。氷柱ちゃんのお話聞いていて楽しいですから。何より楽しそうに話す氷柱ちゃんが可愛らしくて退屈していることはありませんわ」
「も、もぉ~!!」
林檎のように真っ赤になる氷柱は同性でありながらも可愛らしいと思うし庇護欲にかられる、まさに“姫“と呼ばれるに適している女の子であろう。自分がお姫様でいられた魔法は時間が切れている。なにより夢を見る歳ではもうない。
今回氷柱に似合うと思い選んだネモフィラの花言葉は【可憐】と【貴方を許します】
願わくば可憐な貴女と過ごせるこの時間だけは何者でもない“幸“という存在でいられることが許されますように。
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