短編
「梅雪と大喧嘩したのね」
「言わないでください…」
部屋に入るなり目に見えて落ち込んでいるイリアに小さく苦笑いを浮かべ「おいで」と声をかければきゅむっ、と抱き付いてくる。まるで大きな子供のようだ。ショックが強いのか普段ならよ頭を撫でると子供扱いされているようだ、と嫌がったり拗ねたりするのだが今は大人しくされるがままになっている。
「それを強さと言うのなら強さなど要らない。強くなくていい」
「っ!お父様の分からず屋!!」
というのが数刻前に聞こえてきた二人の会話。
その後襖が壊れるのでは?と思うほど大きな音が二回ほど家中を響いた。
ひとつはこの落ち込んでいるイリア。
もうひとつは梅雪。
梅雪もきっと部屋で目の前の男のように落ち込んでいるのだろう。梅雪のことも心配だが、先程の梅雪との喧嘩はナヴィも聞いていたはず。血の繋がりはないとはいえ実の兄妹のように仲良く大切にしている梅雪をほっとくなどナヴィがすることはないし心配して様子を見に行けば梅雪を慰めるはず。
それにもう少し経てば妖魔庁から帰宅する緋雪も梅雪を慰めるだろう。
天秤に掛けるわけではないがイリアのこともほっとけない気持ちも強かった。
「厳しく言うつもりはなかった…だけなのに。梅雪には傷付いて欲しくないだけなのに…」
喧嘩の理由を聞かずイリアを撫でていればポツリポツリと紡がれたその言葉と声には梅雪の意思を尊重させてあげれない情けなさと上手く伝わらない寂しさを含んでいるように聞こえた。
イリアが梅雪を大事に思うように、梅雪もイリアを大事に思っているのは見ていればわかる。
言葉にも態度にも表しているのに、お互いにどうしてこうもすれ違うのだろうか。
(難しいところよね…)
緋雪やナヴィのことも大事にしているし愛しているが息子と娘に対してだとどうしても梅雪に対しては過保護になる。
そして緋雪もイリアに似たような部分がある。大事に大切にするのは良いことだが過保護になることはまた意味が違う。
梅雪本人も父親と兄から大事にさることはちゃんと理解しているし受け止めるが、過保護にされていることに対して強く嫌がる。そのことを度々言っては口喧嘩…を繰り返している。お互いに譲れない想い、というより端から見たら頑固者同士似た者同士なのだ。
(それにしても…)
イリアは子供好きなのもあったし面倒見が良く、贔屓目に見てもWiereleの時も成人し大人になった今も指導者として、教育者としては優秀な方なのに…どうして自分の子供相手だと上手くいかないのだろうか?
愛情が空回りしているのか、子育てが下手なのか…案外両方なのかもしれない。
そんなところも愛おしい…と思うも今落ち込んでいるイリアにかける言葉ではない。
アイリのように長い時間一緒に過ごし双子の片割れゆえにイリアの全てがわかるわけではない。
でも、自分と子供を愛おしく大事に思う気持ちや強さは同じように注ぐ人だというのは知っている。
「ねぇ、イリア。緋雪やナヴィが貴方が信じているように、梅雪のことも信じてみましょう?」
少しの沈黙後「考えてみます」と呟いた声が聞こえた。
「言わないでください…」
部屋に入るなり目に見えて落ち込んでいるイリアに小さく苦笑いを浮かべ「おいで」と声をかければきゅむっ、と抱き付いてくる。まるで大きな子供のようだ。ショックが強いのか普段ならよ頭を撫でると子供扱いされているようだ、と嫌がったり拗ねたりするのだが今は大人しくされるがままになっている。
「それを強さと言うのなら強さなど要らない。強くなくていい」
「っ!お父様の分からず屋!!」
というのが数刻前に聞こえてきた二人の会話。
その後襖が壊れるのでは?と思うほど大きな音が二回ほど家中を響いた。
ひとつはこの落ち込んでいるイリア。
もうひとつは梅雪。
梅雪もきっと部屋で目の前の男のように落ち込んでいるのだろう。梅雪のことも心配だが、先程の梅雪との喧嘩はナヴィも聞いていたはず。血の繋がりはないとはいえ実の兄妹のように仲良く大切にしている梅雪をほっとくなどナヴィがすることはないし心配して様子を見に行けば梅雪を慰めるはず。
それにもう少し経てば妖魔庁から帰宅する緋雪も梅雪を慰めるだろう。
天秤に掛けるわけではないがイリアのこともほっとけない気持ちも強かった。
「厳しく言うつもりはなかった…だけなのに。梅雪には傷付いて欲しくないだけなのに…」
喧嘩の理由を聞かずイリアを撫でていればポツリポツリと紡がれたその言葉と声には梅雪の意思を尊重させてあげれない情けなさと上手く伝わらない寂しさを含んでいるように聞こえた。
イリアが梅雪を大事に思うように、梅雪もイリアを大事に思っているのは見ていればわかる。
言葉にも態度にも表しているのに、お互いにどうしてこうもすれ違うのだろうか。
(難しいところよね…)
緋雪やナヴィのことも大事にしているし愛しているが息子と娘に対してだとどうしても梅雪に対しては過保護になる。
そして緋雪もイリアに似たような部分がある。大事に大切にするのは良いことだが過保護になることはまた意味が違う。
梅雪本人も父親と兄から大事にさることはちゃんと理解しているし受け止めるが、過保護にされていることに対して強く嫌がる。そのことを度々言っては口喧嘩…を繰り返している。お互いに譲れない想い、というより端から見たら頑固者同士似た者同士なのだ。
(それにしても…)
イリアは子供好きなのもあったし面倒見が良く、贔屓目に見てもWiereleの時も成人し大人になった今も指導者として、教育者としては優秀な方なのに…どうして自分の子供相手だと上手くいかないのだろうか?
愛情が空回りしているのか、子育てが下手なのか…案外両方なのかもしれない。
そんなところも愛おしい…と思うも今落ち込んでいるイリアにかける言葉ではない。
アイリのように長い時間一緒に過ごし双子の片割れゆえにイリアの全てがわかるわけではない。
でも、自分と子供を愛おしく大事に思う気持ちや強さは同じように注ぐ人だというのは知っている。
「ねぇ、イリア。緋雪やナヴィが貴方が信じているように、梅雪のことも信じてみましょう?」
少しの沈黙後「考えてみます」と呟いた声が聞こえた。
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