旋律
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地下で新たな鍵を入手したビリーとジャンヌは、養成所に戻って来た。
地図によると、水面が刻まれたこの青い鍵は飼育プール下の、倉庫の奥の扉に使えるもののようだ。
「ここからなら、2階の東からが近いわね」
地図で最短ルートを導き出すジャンヌ。
しかしビリーは地図ではなく彼女の顔を見ていた。
「……大丈夫か?顔色が悪いぞ」
原因はさっきの社員の日記のせいだろう。
生きたまま次第に体がウィルスに蝕まれてゾンビになるという、生々しい実態を知ってしまったからだ。
それでも相変わらずジャンヌの強がりは同じで『大丈夫』『平気』の一点張り。
だがビリーも引き下がりはしない。
やや強い口調で
「無理はするな。少しでも休みたいなら、すぐに言え。いいな?」
と、きつく言いつける。
心配しての発言であり、あまりにも真摯な眼差しを向けられては、ジャンヌも頷くしか出来なかった。
どうせ飼育プールの近くまで行くのだからと、ビリーは天文台にレリーフを置きに行こうと提案をする。
確かに、いつまでもレリーフを持ったまま行動するのは疲れるし、何よりも戦闘の邪魔になる。
了承して倉庫を素通りした2人は天文台に入る。
ビリーはレリーフを装置にはめ込み、ジャンヌは天文台の奥の扉を叩く。
(鍵穴がないから、やっぱりレリーフを使って開くしかないみたいね……)
暇潰し程度にドアを調べ終えたジャンヌは、ビリーが作業を済ませて梯子を上がるのを待った。
「やっと軽くなった」
「ずっと持たせててごめんなさい」
「ジャンヌには、たくさん弾薬を持ってもらってるからな。このぐらいはしないとな」
ビリーが梯子を上がる度に手錠が音を鳴らす。
今までは存在が欝陶しかったそれも、今はあまり気に止まる事もなくなった。
「これで準備はいいな」
「そうね。倉庫に行きましょう」
装備を万端にする彼女の顔に明るさが戻っていたのを確認すると、ビリーは安心したのか黙ってジャンヌの頭をくしゃりと撫でた。
「な、なぁに?」
驚く顔もいつも通りのジャンヌだ。
意地悪く微笑み『何でもないさ』と言ってみせる。
(妹でもいたら、こんな感じなんだろうな)
思いを口にしたら、下に見られるのを嫌う彼女は頬を膨らませて怒るだろう。
だからジャンヌには、はぐらかすようにしてみせた。
そんなビリーの気持ちが読み取れないジャンヌは1人、頭に浮かぶ疑問符を消去出来ずに首を傾げる。