予感
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空を隠す黒い雲が雷を帯び、時折光を放つ。
その空の下では、ビリーとジャンヌが養成所から伸びる橋を渡っていた。
設置されている明かりには嫌な雰囲気の蝙蝠が集まっていて、不気味な様子を更に煽る。
蝙蝠は襲いかかって来そうにないので、感染はしてないようだ。
普段見慣れぬ生物と言えど、いつぶりかに見た正常の生物を見る事に少しだけ安心する2人。
そんな2人が橋を渡り終えて到着したのが、場に不似合いな礼拝堂だった。
孤島に建つこれも禍々しく、かつ重々しい空気を帯びている。
「どうする?」
「入ってみるしかないな」
観音開きの大きな扉を2人で開くと、がらんどうの礼拝室と女神像が彼らを出迎えた。
あんな大がかりな仕掛けを越えた先が、ただの礼拝堂なはずがない。
2人はここにも何かあるだろうと推測して、堂内の奥から調べようとしたところ、入って来た扉から轟音が響く。
「!?」
振り返ると、それまでなかった穴が天井に1つと、扉を塞ぐ瓦礫の山。
それと奇声を発しながら羽ばたく巨大な影があった。
姿格好はさっき橋で見た生物とほとんど変わらないが、翼を広げた大きさには流石に圧倒されて息を飲んだ。
「随分と……大きくなったものね、この蝙蝠は!」
ショットガンを構えるジャンヌが吐き捨てる台詞に、自嘲と焦りが含まれる。
ビリーもグレネードに持ち替えて巨大蝙蝠を睨んだ。
「くそっ、瓦礫で入口が塞がれたな……!」
「逃げる選択肢がなくなったって訳ね……。どうやって出るかは、これを倒してから考えましょう!!」
神聖な礼拝堂での戦闘が開始された。
今まで何種類かのクリーチャーとも戦闘をしてきた2人だったが、今回の戦闘はかなり厄介だった。
巨体ゆえに弾丸は撃ち込みやすいが、その飛行能力が命中率を狂わせる。
なかなか照準が定まらず、引き金がなかなか引けない。
それに加え、本来は飛翔能力はさして高くないはずの哺乳類なのに、この蝙蝠は筋力が発達しているのか、休みなく礼拝堂内を羽ばたいて回る。
これもウィルスの効果だろう。
「天井にでも止まってくれると有り難いけどな……!」
「期待しない方がいいわ!ちっとも疲れた様子がないもの!」
その時、蝙蝠の姿勢が変わった。
羽ばたき疲れた……否、攻撃態勢に入ったのだ。
グライダーのように2人を目がけて一気に飛び込んで来た。
「伏せろ!!」
両サイドに分かれ、ギリギリのところで回避すると瓦礫から埃が舞い上がった。
かなりのスピードなのを物語る。
「っ……!また来る!!」
椅子の陰にいたジャンヌを狙って飛びかかる蝙蝠はジャンヌが攻撃の軌道から回避したにも構わず、爪を立たせた脚で並べられた椅子を破壊していく。
(当たったらまず助からない……。でも隙がない相手にどうやって……)
無駄に消費した弾薬を補充しようとジャンヌがポーチを漁ると、いつもと違う弾が手に触れた。
養成所を捜索中、自分が医務室で作った物だ。
―――これを使うなら今だ。
たった一度のチャンス。
ジャンヌは銃に願い込めて声を張り上げた。
「ビリー!一瞬でいいわ!奴を引きつけて!!」
ビリーは彼女に何か考えがあるのを見越して頷くと、使い勝手のいい拳銃に持ち替えて蝙蝠を狙う。
標的をビリーに変えた蝙蝠は、甲高い奇声を上げて彼に突進する。
脚で蹴る動作をしたり、時には噛みつこうとしたりもする。
危険だが、相手が近づいて来て攻撃が当てやすいチャンスでもある。
すぐさま蹴る為に突き出された脚部を撃ち抜くと、蝙蝠が悲鳴を上げて大きく仰け反った。
その好機をジャンヌは逃さない。
ビリーが流れ弾に当たらぬよう、彼が椅子の陰に身を隠した直後、彼女は照準を蝙蝠の顔面を捉えると躊躇なく引き金を引く。
一際大きな悲鳴が礼拝堂に響き渡ると、着弾した部位が音を立てて焼けた。
蝙蝠は口から発する超音波の反射を聞き取って物や生物の存在を判断する。
今の攻撃で聴覚を司る器官を失い、バランス感覚を狂わせた蝙蝠は激しく床に落下した。
2人は同時に蝙蝠を撃つ。
この動きを止めた今しか、攻撃するチャンスはない。
スキルの高い軍人からの猛攻に、流石のクリーチャーも耐え切れずにその場で息絶えた。