暴君
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研究所を離れて行くロープウェイの中、唯一の乗客であるジャンヌは未だ顔を膝に埋めて沈黙していた。
いつも隣にいるはずの彼……ビリーがいない大きな不安、深い悲しみが彼女を襲う。
目の前で転落したビリーの姿が何度も脳裏で繰り返され、その度にジャンヌは助けられずに同じ後悔をしていた。
声涙を嗄らし、泣き疲れた彼女の思考は完全に虚無に陥っている。
「ビリー……」
感情のこもらない声で呟くと、ジャンヌの頭に柔らかい感触がする。
「らしくないぞ、ジャンヌ。いつものお前はどうしたんだ?」
あの茶化すような意地悪な台詞が聞こえた。
「ビリー!?」
驚いてハッと顔を上げるジャンヌ。
……けれど、見上げた先にビリーの姿はなく、窓から入る人工の光だけが流れていた。
「夢……か」
束の間の喜びから一転、再びジャンヌは膝を抱え直して縮こまる。
(どうせ夢なら……さっきの事が夢だったら良かったのに……)
空っぽの自分の隣を見つめてジャンヌは思った。
しかしどんなに願おうとも、現状は何1つとして変わらない。
「……ビリー、あなたならどうする……?」
もしも自分が水路に落ち、ビリーがロープウェイに乗って脱出していたら……。
だがそんな事、考えずとも答えなんて分かっている。
『お互い協力しようと言ったろ』
養成所の地下で彼が言った言葉が甦る。
(ビリーならきっと、諦めたりなんかしないわ……)
じわりと浮かんだ涙を払い、ジャンヌはキッとした表情を取り戻す。
「私がこんなんじゃあ、ビリーに心配かけちゃう……!!しっかりしなきゃ……!」
今まで幾度も彼に助けられてたのだから、今度は自分が助ける番だ。
そう己を叱咤し、銃を強く握りしめた。
彼女の瞳に光が、心に闘志が宿る。
すると強く決心したジャンヌを迎えるかのように、ロープウェイが停車した。
窓から外を見ると、また別の施設に到着したようだ。
「まずはビリーを探さなきゃ……。下流を辿って行けば、きっと……」
武器をまとめながら呟くジャンヌは、ロープウェイの壁に掛けられた大きなリュックを発見する。
手にしてみると、かなりの重さがある。
袋の上から触ってみると、普段から知っている感触が指から伝わった。
もしかして……と、袋を降ろして中を調べてみると、なんとたくさんの弾薬が詰め込まれていた。
中途半端に使用された形跡もあったが、それでも量は豊富である。
「良かった……!これだけあれば、何とかなるわね!」
項垂れたままでは気がつかなかったとつい苦笑しつつも、内心かなりホッとしたジャンヌ。
次に彼女がやる事は、武器の選別だ。
流石に全ての武器を担いで行動は出来ない為、残弾数なども考慮し、持っていく武器を選ばなくては。
「ハンドガンは必需品として……ショットガンとグレネードランチャーは、どちらかじゃないと行動しづらいわね……」
ジャンヌは弾薬の数を確認して、弾が多い方のグレネードランチャーを装備する事にした。
ショットガンは一旦ロープウェイに残す為に床に置き、ショットシェルを袋に仕舞おうとすると、中にまだ何か入っているようだ。
(何かしら……?)
重みのあるそれを取り出した瞬間、ジャンヌは驚きから言葉を失った。
―――自分は本当に運だけはある。
そう思い、手の中の物を見つめた。
ハンドガンの数倍の攻撃力を持つ、大型の銃……マグナム。
銀色の光沢のボディは、重量感をより感じさせる。
幸いにも、ジャンヌの所持する弾薬の中にマグナムも入っていた。
「待っててビリー……。今行くから……!」