咆哮[前編]
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その後、ジャンヌとビリーはロープウェイにショットガンを取りに戻った。
手間はかかったが、武器の有無は生存に深く関わる為だ。
そうして2人は、人型ヒルと戦闘した連絡通路で見つけた新たな場所を探索していた。
―――扉を抜けた直後にジャンヌの悲鳴が上がったが。
「どうした?この数に驚いたか?」
背中合わせに戦う彼女からの返事はない。
「……じゃあ、そういう事にしてやるよ」
ビリーはそれだけ言って、目の前に迫るゾンビの群れに銃弾を放つ。
―――確かにジャンヌは驚いて声を上げた。
しかしその理由は襲いかかって来たゾンビの数などではなく、ゾンビの容姿だった。
実験体にされて性別は判別不能だが、一糸纏わぬ姿で突然右から左からと現れたのだ。
呻き声を漏らして迫るゾンビ達は、鉛弾を受けて倒れていく。
最後のゾンビを倒すと、ジャンヌが足早に奥の扉を目指してビリーの脇をすり抜けた。
(……また照れ隠しか)
自分らしくない悲鳴を上げた事が余程恥ずかしかったのか、あれから彼女は一度もこっちを向いてくれない。
ふと、研究所にてジャンヌが通信中にもそんな悲鳴を上げた事を思い出すと、口に手をやって小さく笑った。
「わ……笑わないでよっ!」
些細な仕草に気づかれ、案の定怒鳴られた。
でも赤い顔のままなのが、どうも気を緩めさせる。
「すまない。悪気はないんだ」
「もうっ……」
たまに見せる、ジャンヌの子供じみた表情に安心する自分がいた。
(すっかり依存してるな、俺も……)
依存の元になった彼女に続き、ビリーは扉を潜ろうとするが、ジャンヌが突然扉から離れて自分を突き飛ばすと同時に、ドアに鋭利な爪が突き刺さった。
「この爪……ハンターか!?」
「金切り声が聞こえたから、まさかとは思ったけど……!」
2人の装備が、ハンドガンからショットガンと硫酸弾を込めたグレネードランチャーに変わる。
獣の雄叫びが上がると、隔てていたドアが突き破られてハンターが2体現れた。
まずはビリーが硫酸弾を手前のハンターに放ち、後ろのが奇声を発しながらジャンプする。
そこを攻撃したのは、ショットガンを構えるジャンヌ。
空中での攻撃に怯んで落下したハンターに、再び硫酸弾が撃ち込まれる。
意外に呆気なく終わった戦いに、ジャンヌは
「……ハンターってこんなものだったかしら?」
と首を傾げた。
「俺達のコンビネーションが良かったんだろ。さ、邪魔者はいなくなった事だし、先に行こう」
「確かに、こうやってハンターを2人で相手したのも初めてだったわね」
どちらの考えももっともだと頷くと、急にジャンヌはハッとして
「さっきは急に突き飛ばしてごめんなさい……!」
と頭を下げる。
しかしビリーにとっては些細な事だったし
「突き飛ばしてなかったら、俺はハンターにやられてたんだ。ジャンヌが謝る事はないさ」
と答えて頭を撫でてやるが、彼女は口をへの字にした。
また怒らせたかと思いきや、ジャンヌは
「あ……頭を撫でられる事なんてないから、反応に困るんだけど……」
と困ったように言うだけ。
予想もしてなかった言い分に、らしくなくきょとんとするビリー。
今までだったら『からかうな』と怒った気色を見せただろうに、まさか恥ずかしそうに言われるとは。
こんなに可愛らしい仕草を見せる程、自分に心を開いてくれたのだという実感を噛みしめたつつ、口元を緩めて
「だったら、早く慣れてもらわないとな」
そう言ってまた金髪に大きな手を置いて微笑む。
ムッとした顔をしてもやめろと言わない辺り、彼女も満更でもないようだ。
何にしても、安全は確保出来たので、2人は活動を停止したハンターを横目に通路を進んでいった。
―――その先で予想外の出会いがあるとも思わず。