第2話〜地獄の門番ケルベロス〜
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スラム66番通りに出た頃には、すっかり日が暮れて夜になっていた。
今宵は満月。
月がダンテの銀髪のように夜空に映えている。
「……お店や建物がたくさんあるのに、随分静かな街だね」
「ああ、そうだな……」
いつもなら賑わう酒場も道路も、たった1人の気配がない。
悪魔の襲来に恐怖して街から逃げ出したか、或いは既に悪魔の手にかかったか……。
どちらにしても、マヤを怖がらせる要素にしかならない為、それを決してダンテは口にしなかった。
「……うわ~、ダンテの家から見た時より、やっぱり大きい塔だね~」
登るのも一苦労だと唸るマヤの視線より下を見ると、建物の上に何か降って来た。
石像のような重量感のある音を立てて動き出すそれは、6本の腕を器用に動かして青い矢をこちらに向かって構える。
「エニグマかよ……!ったく、こんな街中になんか、どこにも石像なんてなかっただろ!」
魔術によって生命を得た石像が元の悪魔だが、こんな街中に思い当たる石像はなかったはず。
となると、別の場所からわざわざ出向いてくれたらしい。
「な、何!?また違う悪魔!?」
「アイツはお手製の弓矢で攻撃してくる。ヘルズより厄介だから、上手に逃げるんだぞ」
「えっ!?ちょっ……ダンテ!?」
エボニーとアイボリーでエニグマを迎撃しながら走り出すダンテに、慌ててマヤもついて行こうとするも、道路脇の壁から現れたヘルズの群れに足止めされてしまう。
「っ……!!で、でも……怖がってられないんだからっ!ダンテが悪魔を倒し終わるまで、頑張って逃げ回ってやるっ!!」
「その意気だ!そんじゃ……プリンセスを待たせる訳にいかないんでね」
ダンテが地面を、そして壁を蹴る。
「悪いが早く終わらせてもらうぜ」
エニグマの真上に飛び上がると、愛刀リベリオンで兜割りを叩き込んだ。
爽快に飛び散るエニグマだった破片。
そしてダンテは地上でマヤを狙う悪魔に目標を変えた。
「マヤを狙おうっていうんなら……」
またふわりと飛び上がると、空中で逆立ちする姿勢で銃を構える。
「マネージャーでも通してもらおうか」
次には銃弾の雨が降り注ぐ。
最後は銃で倒し切れなかったヘル=ラストを剣で真っ二つにして、市街地はまた静かになった。
「わあ……。す……ごい……」
ダンテの並外れた動きに、マヤはそれしか言えなかった。
―――しかし、ダンテにはどうしても引っかかる事があった。
あの時、自分が人間の他に、悪魔の血も引いていると告げた時、絶対に彼女に言われると思っていた事が―――……。
「……怖く……ないのか?」
「え?」
「半分とはいえ、俺も悪魔なんだぜ?マヤは怖いと思わないのか?」
「……どうして?」
疑問符の付いた会話が交わされ続ける。
「どうしてって……!ヘル=プライドやバンガードやエニグマみたいな悪魔の血が、俺にも流れてるんだぜ?それでマヤは何とも思わないのか?」
「……悪魔の血が流れてたって、ダンテはダンテでしょ?それに、ダンテは私を守ってくれたもん。だから……ダンテを怖いとか……そんな目で見る必要はないよ」
「…………」
言葉が詰まる。
優しい言葉、温かい眼差しがダンテの不安を跡形もなく消し去った。
子供のように無邪気で、それでいて母のような包容力がある……。
堪らずダンテはマヤを抱きしめようとするが、瓦礫が崩れる音で驚いた彼女に腕は交わされてしまった。
「ビ、ビックリした~!また悪魔が出たかと思ったよ……」
……いっそ悪魔だったのなら、チャンスを奪った腹いせにリベリオンの餌食にしてやったのに……と、ぶすっとするダンテ。
「……行くぞ」
大きな溜息を吐くと素っ気なく歩き出して、酒場……ブルズアイに入ろうとする。
「あっ……待ってダンテ」
不慣れな道路を走って距離を縮めようとするが、ダンテは待つ素振りを見せない。
(……怒ってる?)
まるで子供のように怒りを現す行動に、マヤは不安でいっぱいになった。
すると頭の中で会議が始まる。
彼を怒らせたのは誰?
ここにいるのは自分だけだ。
なら自分がダンテを怒らせた?
ではどうしたらいい?
マヤの脳内会議は終了して慌ててダンテを呼ぶが、まるで聞こえていないかのように店内に入ろうとしてしまう。
「ダ……ダンテ待って!!」
「!!」
言葉で引き止められないなら……と、マヤは大胆にも抱きついてダンテの足を止めた。
「その……ご、ごめんなさい!!」
「は?どうしてマヤが謝るんだ?」
「だ、だって……ダンテ、怒ってるんだもん……。私のせいで」
「マヤのせい!?オイオイ、冗談はやめてくれよ!そんな事は絶対にないぜっ!?」
「……本当?」
「当たり前だっ!」
「ならどうして怒ってたの?」
痛い事を突かれてギクッとした。
―――君を抱きしめる機会を奪った瓦礫が憎かったからさ。
そんならしくない台詞、ダンテでも言えるはずもない。
一応スマートさを売りにしている自分が……と、ダンテは適当な言い訳をした。
「その……大人数でマヤ1人を狙おうとした、卑怯な悪魔共にムカついてたんだよ」
(悪魔に卑怯もクソもあるかよ……)
すぐに心の中で自分の発言に悪態をつくも、マヤは抱きついたままで
「やっぱりダンテって優しいね」
とあどけなく笑ってみせた。
今宵は満月。
月がダンテの銀髪のように夜空に映えている。
「……お店や建物がたくさんあるのに、随分静かな街だね」
「ああ、そうだな……」
いつもなら賑わう酒場も道路も、たった1人の気配がない。
悪魔の襲来に恐怖して街から逃げ出したか、或いは既に悪魔の手にかかったか……。
どちらにしても、マヤを怖がらせる要素にしかならない為、それを決してダンテは口にしなかった。
「……うわ~、ダンテの家から見た時より、やっぱり大きい塔だね~」
登るのも一苦労だと唸るマヤの視線より下を見ると、建物の上に何か降って来た。
石像のような重量感のある音を立てて動き出すそれは、6本の腕を器用に動かして青い矢をこちらに向かって構える。
「エニグマかよ……!ったく、こんな街中になんか、どこにも石像なんてなかっただろ!」
魔術によって生命を得た石像が元の悪魔だが、こんな街中に思い当たる石像はなかったはず。
となると、別の場所からわざわざ出向いてくれたらしい。
「な、何!?また違う悪魔!?」
「アイツはお手製の弓矢で攻撃してくる。ヘルズより厄介だから、上手に逃げるんだぞ」
「えっ!?ちょっ……ダンテ!?」
エボニーとアイボリーでエニグマを迎撃しながら走り出すダンテに、慌ててマヤもついて行こうとするも、道路脇の壁から現れたヘルズの群れに足止めされてしまう。
「っ……!!で、でも……怖がってられないんだからっ!ダンテが悪魔を倒し終わるまで、頑張って逃げ回ってやるっ!!」
「その意気だ!そんじゃ……プリンセスを待たせる訳にいかないんでね」
ダンテが地面を、そして壁を蹴る。
「悪いが早く終わらせてもらうぜ」
エニグマの真上に飛び上がると、愛刀リベリオンで兜割りを叩き込んだ。
爽快に飛び散るエニグマだった破片。
そしてダンテは地上でマヤを狙う悪魔に目標を変えた。
「マヤを狙おうっていうんなら……」
またふわりと飛び上がると、空中で逆立ちする姿勢で銃を構える。
「マネージャーでも通してもらおうか」
次には銃弾の雨が降り注ぐ。
最後は銃で倒し切れなかったヘル=ラストを剣で真っ二つにして、市街地はまた静かになった。
「わあ……。す……ごい……」
ダンテの並外れた動きに、マヤはそれしか言えなかった。
―――しかし、ダンテにはどうしても引っかかる事があった。
あの時、自分が人間の他に、悪魔の血も引いていると告げた時、絶対に彼女に言われると思っていた事が―――……。
「……怖く……ないのか?」
「え?」
「半分とはいえ、俺も悪魔なんだぜ?マヤは怖いと思わないのか?」
「……どうして?」
疑問符の付いた会話が交わされ続ける。
「どうしてって……!ヘル=プライドやバンガードやエニグマみたいな悪魔の血が、俺にも流れてるんだぜ?それでマヤは何とも思わないのか?」
「……悪魔の血が流れてたって、ダンテはダンテでしょ?それに、ダンテは私を守ってくれたもん。だから……ダンテを怖いとか……そんな目で見る必要はないよ」
「…………」
言葉が詰まる。
優しい言葉、温かい眼差しがダンテの不安を跡形もなく消し去った。
子供のように無邪気で、それでいて母のような包容力がある……。
堪らずダンテはマヤを抱きしめようとするが、瓦礫が崩れる音で驚いた彼女に腕は交わされてしまった。
「ビ、ビックリした~!また悪魔が出たかと思ったよ……」
……いっそ悪魔だったのなら、チャンスを奪った腹いせにリベリオンの餌食にしてやったのに……と、ぶすっとするダンテ。
「……行くぞ」
大きな溜息を吐くと素っ気なく歩き出して、酒場……ブルズアイに入ろうとする。
「あっ……待ってダンテ」
不慣れな道路を走って距離を縮めようとするが、ダンテは待つ素振りを見せない。
(……怒ってる?)
まるで子供のように怒りを現す行動に、マヤは不安でいっぱいになった。
すると頭の中で会議が始まる。
彼を怒らせたのは誰?
ここにいるのは自分だけだ。
なら自分がダンテを怒らせた?
ではどうしたらいい?
マヤの脳内会議は終了して慌ててダンテを呼ぶが、まるで聞こえていないかのように店内に入ろうとしてしまう。
「ダ……ダンテ待って!!」
「!!」
言葉で引き止められないなら……と、マヤは大胆にも抱きついてダンテの足を止めた。
「その……ご、ごめんなさい!!」
「は?どうしてマヤが謝るんだ?」
「だ、だって……ダンテ、怒ってるんだもん……。私のせいで」
「マヤのせい!?オイオイ、冗談はやめてくれよ!そんな事は絶対にないぜっ!?」
「……本当?」
「当たり前だっ!」
「ならどうして怒ってたの?」
痛い事を突かれてギクッとした。
―――君を抱きしめる機会を奪った瓦礫が憎かったからさ。
そんならしくない台詞、ダンテでも言えるはずもない。
一応スマートさを売りにしている自分が……と、ダンテは適当な言い訳をした。
「その……大人数でマヤ1人を狙おうとした、卑怯な悪魔共にムカついてたんだよ」
(悪魔に卑怯もクソもあるかよ……)
すぐに心の中で自分の発言に悪態をつくも、マヤは抱きついたままで
「やっぱりダンテって優しいね」
とあどけなく笑ってみせた。