第3話〜道化師ジェスター〜
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ケルベロスが守護していた扉を通ると、吹き抜けに近い程高い天井と螺旋状の階段が2人を迎えた。
一番彼らの目を引きつけたのは……。
「髑髏の天使……?」
マヤが広間の中央に立つ像を見て呟いた。
綺麗なはずの天使像が、髑髏の顔のせいで不気味に感じられる。
「何か嫌だなぁ……」
「そうか?髑髏の天使なんて面白いじゃん。それとも怖いか?」
「こ、怖くなんか……!!……ちょっと……気味が悪いだけだもん……」
マヤが俯いて頬を膨らませながら強がってみせるが、ダンテはその仕草に笑って彼女の頭を撫でた。
「素直に怖いって言えよ。それに、ケルベロスやヘル=バンガードとかの方がおっかなかったんじゃないか?」
「それはそうだけど……。だって、エニグマの件があったから……」
「エニグマ?……ああ、石像が動くんじゃないかって思ったのか」
考えを当てられ、マヤは首を縦に2、3回振る。
「安心しろって。少なくともここの広間に悪魔の気配はない」
「本当?」
「ああ。間違いない」
自信満々に答えるダンテだったが、途端に今までの自分の素行を思い出した。
(今までちょっとからかい過ぎたな……)
しまったと思い、恐らくこちらに疑いの眼差しを向けているであろうマヤの顔を見ると……。
「なら安心した」
冷たい眼差しとは正反対の、温かく柔らかい微笑みを向けていた。
―――この笑顔をわざとやっていたとしても、俺は甘んじて喜んでやろう、なんてダンテは思った。
けれど、今まで過ごした短い時間の中でも、マヤがそんな事をするはずがないと推し量る。
「それで……どう行けばいいのかな?」
「そうだな……。取り敢えず登るか」
円形状の部屋の階段は左右に伸びていた。
髑髏の天使像に向かって左の扉は、何故か炎に包まれていて通れそうにない。
「ってなると……右だな」
一見、特に目立った所はないので、無難に進めそうだ。
―――ダンテにとっては。
とある通路を兼ねた部屋にて、マヤは半泣きで
「動かないって言ったのに!!」
とか
「爆発するって知ってたなら教えてよ!!」
などとダンテに怒鳴った。
あの後、彫刻像が置かれた部屋に入ったら石像がエニグマに変貌して襲いかかってきたり、更に今いる場所の階段を登ってる最中に足場が崩れ、悪魔がうじゃうじゃいる中に落とされた。
落下したダンテとマヤを迎えた悪魔は、今やお馴染みになったヘル=プライドとヘル=ラスト、ヘル=スロースに加え、ヘル=レイスがいた。
このヘル=レイス、かなり面倒な特性を持つ。
細身の体に不似合いな、巨大な魔獣の心臓を頭上に掲げて、敵に近づくとその心臓を爆発させるのだ。
勿論爆発した後はヘル=レイスも砂と化す。
その姿はまさに特攻隊。
だがレイスの意思以外で爆発させる事も出来る。
その方法が、銃撃。
剣などの攻撃は一切受けつけないが、銃弾ならダメージを与える事が出来、上手くいけば爆発に巻き込まれる事なく倒す事が可能だ。
ダンテがそれを狙ってエボニーとアイボリーを構えた時、マヤにも言った。
「こいつは銃で倒せるぜ」
それを聞いたマヤはショットガンを向けた。
あまり距離が取れてないのに。
ダンテがその事に気づくと、マヤを慌てて片手で抱き上げながら飛び、空中から発砲してレイスを爆発させた。
あのまま撃っていたら、間違いなく自分も吹き飛んでいた事を知ったマヤの目は点になる。
そして無事に悪魔の巣窟から脱出した途端に、ダンテに怒鳴った……という流れだ。
「あの状況じゃ説明しづらいだろ?」
「なら逃げろって言ってよー!!そしたら自分から離れたのに!!」
涙こそ流してはいないが、わんわんと泣き喚くマヤに、ダンテは苦笑して頭を掻いた。
(憤怒のヘル=レイス以上にお怒りだぜ……)
けれど怒られてばかりのダンテではない。
マヤを大人しくさせるのなんて、長年やって来た悪魔退治よりも簡単だ。
手順も準備も何もいらない。
ただ抱きしめるだけ。
すると、あれだけ騒いでいたマヤがピタリと動きを止めた。
(ほらな)
そして最後に、いつもより低い声音で耳元で囁けば完璧だ。
「ごめんな、マヤ。怖がらせて……」
「ダッ……ダ、ダンテ……!!わ、分かったから!もう怒らないから~!!」
本当にマヤはこういった類いの事が苦手なようだ。
コロコロと変わる彼女の豊かな表情が、戦ってばかりのダンテの心を癒してくれる。
「……ああ。分かってくれればいいんだ」
すっと抱きしめていた彼女を放すと、途端に腕が寂しくなった。
「んもう……!早く先に行こう!ほら、結界が解けてるから次の部屋に進めるよ!」
確実に照れや恥じらいを隠すように、わざと彼の後ろから背中を押して大きな扉へ押しやるマヤ。
「随分とせっかちなプリンセスだな。そんなに押さなくても自分で歩けるって」
笑いながら押しやられた扉を開いてみると、異様に広い部屋に出た。
少し崩れた足場があったり、クモの巣が所々に張り巡らされてたりする中、特に気になるのが大きな穴。
「……何の穴かな?すっごく大きいね」
「まさか何かの巣だったりしてな。……ん?」
冗談を口にして、穴のただならぬ大きさに気づいた。
そして部屋の奥から響く振動。
「……げっ」
ダンテが部屋の奥に顔を向けた途端、思い切り嫌そうな顔をした。
こちらに向かって巨大な生物が、口をバクバクと開けて飛んで来ていたのだ。