森からの旅立ち
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呪いをかけられたデクの樹の中でゴーマと戦い、見事勝利したリンクとルナ。
彼らは今、デクの樹から呪いをかけた張本人───諸悪の根源について語られていた。
「ワシに呪いをかけた者、それは黒き砂漠の民じゃ……。あの者は邪悪な魔力を操り、ハイラルのどこかにあるという聖地を探し求めておった……。何故なら聖地には、神の力を秘めた伝説の聖三角……トライフォースがあるからじゃ……」
「トライフォース……?」
生まれて初めて聞く言葉にリンクだけでなく、ルナも不思議そうな顔で尋ねた。
「トライフォース……。それを語るには、このハイラルが創られた伝説から話さねばなるまい……」
世に理なく、命未だ形なさず……。
混沌の地ハイラルに、黄金の三大神、降臨す。
すなわち……力の女神、ディン。
知恵の女神、ネール。
勇気の女神、フロルなり。
ディン……。
そのたくましき炎の腕をもって地を耕し、赤き大地を創る。
ネール……。
その叡知を大地に注ぎて、世界に法を与える。
フロル……。
その豊かなる心により法を守りし、全ての命創造せり……。
三大神、その使命を終え、彼の国へ去り行きたもう。
神々の去りし地に、黄金の聖三角残し置く。
この後、その聖三角を世の理の礎とするものなり。
また、この地を聖地とするものなり―――…。
「───その三大神が残した聖三角……トライフォースって何なんですか?」
「トライフォースには、触れた者のいかなる願いをも叶える力を持つという伝説がある……。そして触れた者の心が清らかならば世界は楽園となり、心悪しき者が触れれば世界は魔界と化す……」
今までコキリの森でしか暮らしていなかったリンクとナビィは勿論、町で暮らすルナも初めて聞く話の大きさに驚きを隠せなかった。
「もし魔界になったら……世界はモンスターだらけになっちゃうのネ……」
ナビィが体を奮わせて呟くと、デクの樹は強くリンク達の名前を呼ぶ。
「あの黒き砂漠の民をトライフォースに触れさせてはならぬ!悪しき心を持つあの者を聖地に行かせてはならぬ!あの者はワシの力を奪い、死の呪いをかけた……!やがて呪いはワシの命を蝕んでいった……!」
「死の……呪い……!?」
デクの樹の言葉に全員が絶望を抱く。
「だ、だけど……私達、頑張ってゴーマを倒したよ!?だから大丈夫だよね!?デクの樹サマ……死なないよねぇ……!?」
込み上げる涙を瞳に溜めつつルナは叫ぶ。
しかしデクの樹の声は、徐々に弱まっているのが現実だった。
「……ありがとうルナ…、リンク、そしてナビィ……」
唯一残る気力で、感謝の言葉を伝えるデクの樹。
「お前達は見事に呪いの源であるゴーマを倒してくれた……。だがワシの命は戻らぬようじゃ……」
ルナ達の胸が悪寒と共にドクンッと跳ねる。
「ワシは間もなく死を迎えるだろう」
「そっ……んな……っ」
ショックを受け止めきれなかったリンクは、その場に崩れてしまった。
「オ……オレのせいですか……!?ゴーマを倒すのが遅かったから……デクの樹サマが……!!」
デクの樹はリンクの問いを否定し、続けて優しく言った。
「呪いはかけられた瞬間から命を蝕むものじゃった。遅かれ早かれ、ワシの運命は決まっておった……。しかしお前達がゴーマを倒してくれたから、苦しさはなくなったよ……。ありがとう……」
苦しさはなくなったといっても、失われていく生命力のせいでデクの樹の言葉は弱くなる一方だった。
心が痛むリンク達は、涙を堪えるしか出来ない。
「お前達に全てを話せてワシは本望じゃ……。これでハイラルに希望が残されたからな……」
「私達が……希望……?」
デクの樹はうむと頷くと、最後の力を振り絞った。
「リンク、ルナ……。ハイラルの城に行くがよい。その城には神に選ばれし姫達がいるはずじゃ……」
手の甲で涙を拭って立ち上がるリンクは、真っ直ぐにデクの樹に向き直る。
「この石を持って行け……。あの男がワシに呪いをかけてまで欲した、この精霊石を……」
その時、デクの樹から大きな力が放たれると辺りは森より眩しい緑の光に包まれた。
光を見たコキリ族も続々と広場に集まり、その光を静かに見つめる。
形を留めた光はキラキラと軌跡を残して、リンクの手の中に納まった。
「それは森の精霊石、コキリのヒスイ……。聖地への扉を開く為の鍵の1つじゃ……。リンク、そしてルナ……。ナビィと共に外の世界へ行くのじゃ……。ワシがいなくなってもこの森は大丈夫じゃ……。安心して行ってくるがよい……」
一際弱まった声にルナを始め、他のコキリ族も事態を理解して涙を零し、悲痛な声で森の主の名前を口々にする。
「皆……ありがとうな……。ワシの可愛いコキリ族の皆……さらば……じゃ……」
「―――……!!」
別れの言葉にハッと顔を上げるリンクが見たのは、それまで青々としていた葉が枯れ、地に下ろしていた根から枯渇するデクの樹の姿だった。
「デクの樹、サマ……?デクの樹サマ!?デクの樹サマッ!!?」
何度叫んでも、返事は二度と来る事はなかった。
直後、コキリの森は幼い子供達の泣き声でうめつくされると、泣くまいとしていたリンクとルナも、縋るように枯れたデクの樹の体にしがみつき、死を悼んで声を嗄らすまで泣き続けた―――……。