第4話〜炎風の双剣アグニとルドラ〜
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ジェスターからのプレゼントを片づけ終わったダンテとマヤは、やっとの思いでテメンニグルのホールに戻ってきた。
「結構登ったな」
「うん。もう上まで着きそうだね」
とは言え、あんな巨大な塔だから実際はもっと登る必要がありそうだが。
「マヤ、疲れてないか?」
「ちょっとね……。ダンテはあれだけ戦っても全然疲れてなさそうだね」
「俺は平気だ。あれぐらい、準備運動と一緒だからな」
長い階段で交わされる、至って穏やかな会話の中で、たまに疲労でよろける彼女を労って、手を引いてやったりするダンテ。
「……お。上まで来たぜ」
途切れた足場に台座がある。
さっき手にした常闇の天文盤が丁度はまりそうだ。
ダンテが台座にはめると、フロアに振動が広がる。
「あっ!見てダンテ!」
階下を見下ろしたマヤが言った。
「壁……かな?スライドして通れるようになった場所があるよ」
「どこだ?」
「あの床が崩れた場所。ほら、何か光ってるでしょ?」
マヤが指差す場所を見遣ると、確かに何かが光を放っている。
「今ので取れるようになったって事か。行くか」
「先に進めるようなるといいね」
下りるだけならマヤの足取りも軽やかだ。
そして仕掛けを作動させて得たアイテムは、妙にリアルな心臓の形の物だった。
マヤは嫌そうにそれを見つめるが、すぐにダンテのポケットに仕舞われた。
「便利な道具が手に入ったぜ。マヤ、次に進めるぞ」
「……その道具で?」
「ああ」
「で、でもダンテ。もう行けそうな部屋は全部回ったんじゃない?あと行ってないのは、下の炎で入れない扉ぐらい……」
「そっちはまだだ。来た道を戻るぜ」
「えぇっ?」
ますます理解が出来ない。
今まで回った場所に、別の道や扉があっただろうか。
(まさか……ギガピードの巣なんてオチじゃあ……)
彼女が予想出来たのはそれ1つだけだった。
しかし、流石そんな訳はないだろうと首を横に振った時、段差も何もない所でマヤの足が縺れて転んでしまった。
「ぅわわっ!?」
咄嗟に手を前に出したお蔭で怪我はなかったが、歩き通したせいでか大分負担がきていたようだ。
元々運動能力も優れてなく、体力も低いマヤがここまで活動出来たのも、トリックスターの恩恵があってこそ。
「明日には筋肉痛になりそう……」
「本当に大丈夫か?少し休むか?」
「ううん、休む時間が勿体ないし……先に進もう」
「だけどさっきから歩き方がぎこちないぜ?」
「大丈夫大丈夫!その代わり、少しゆっくり歩いて…………んわぁっ!?」
痺れを切らせたダンテが言い切る前にマヤを横抱きにした。
「吐くならもっと上手な嘘を吐くんだな」
やんわりと叱りつけてマヤを黙らせ、ダンテは来た階段を登り始める。
「ダ……ダンテ!自分で歩くよ!」
「また転ばれたら困る」
「重いからいいよ!」
「重くない」
「ダンテが疲れちゃうし!」
「疲れない」
有無を言わせない口調のダンテに、ついにマヤはしゅんとして黙り込んだ。
でも黙る、というより落ち込んだように見える。
「……マヤ?」
「私……ダンテのお荷物みたい」
その一言でダンテの足がピタリと停止した。
「ろくに戦えないし、逃げるにしたってダンテの邪魔になってるし……。ギガピードみたいな大きな悪魔相手には逃げるのもままならないし……」
ついにマヤの茶色の瞳に涙が浮かぶ。
「わっ……!な、泣くなよ!!」
「だってぇ~」
もう1人の自分なんてものが実在してこの場にいたら、間違いなく「泣かせた」「いけないんだ」と罵声を浴びせている事だろう。
女に泣かれる事には変な話、彼は慣れていた。
でもそれは形振り構わず言い寄る女の話であって、マヤのようなピュアな女の涙には悲しい程に弱い。
端から2人を見ると、途端にむずがる赤ん坊と慌てふためくパパにさえ見える。
「な、泣くなって!!だ……第一、俺の口からそんな事聞いたか!?聞いてないだろ!?だからもうその考えはいらない!!捨てろ!!綺麗サッパリ!!いいな!?」
早口でまくし立てられ、マヤはダンテの腕の中で硬直して驚きから目を丸くした。
言い切ったダンテは酸素が足りず、肩で大きく呼吸する。
「とにかく。……俺は気遣いとか出来ないから、泣かれたところで対処の仕方が分からないから勘弁してくれ」
そっとマヤを降ろして言うと、急に背中を見せてしゃがむダンテ。
「ほら、おぶってやる」
「?」
「次の部屋に行くまでの間だけな。着いたらまた自分の足で歩いてくれよ」
横抱きからおんぶに変えたのは、自分の火照った顔を見られたくないかららしい。
それと、まだマヤに無理をさせたくない想い。
マヤは少しだけ迷いつつも、彼の肩に手を置いて彼の背中に体を預けた。
「よし!出発!」
ダンテのまるで子供のような言葉に微笑みが浮かぶ。
そしてマヤはダンテの首に腕を回して言った。
「気遣いが出来ないなんて言って……。ちゃんと出来てるよ。……ありがとう」
肩と背中から感じるマヤの温もりに、冷めかかった体温がまた上がった。
反論も出来ず、俄かにダンテはがむしゃらに走り出す。
「わっ!!速いよダンテ!」
驚いたマヤが言うけど、ダンテは無視して走り続けた。
(どこまで天然なんだよ、このプリンセスは……!!)